2012.2.28 より転載
きょう2月28日の各紙は一斉に民間事故調査報告書なるものが発表されたと報じている。
それにとどまらない。テレビは一斉にこれを報じている。
報じられたその内容は総じて菅政権下で行われた事故対策について厳しいものだ。
それはそれでいい。
菅や枝野の対応を弁護するつもりはない。
さすがに民間人の手による調査は手厳しく、そしてなによりも政府や国会の調査・検証より迅速であると妙に感心してその報道を最初は受け止めたものだ。
しかしよく考えてみればそのいかさまぶりに気づいた。
世間は気づいていないだろうから教える。
民間報告書とはなんだ。民間による原発事故の調査・検証などというものが、いつ、どのような形でおこなわれることになっていたのか。
そんなことは誰も知らなかっただろう。
そう思って各紙の報道を読んでいくうちにわかった。
この調査は「福島原発事故調査独立検証委員会」の手によるという。
この仰々しい名前の委員会は「元新聞記者が理事長を務める財団法人」が選んだ官僚OBや御用学者、ジャーナリストたちから構成されたものであるという(2月28日産経)。
元新聞記者とは誰か、どういう名前の財団法人なのかと、さらに疑問を抱いて各紙を読み進めていくうちに毎日新聞に次のような説明を見つけた。
すなわち船橋洋一元朝日新聞主筆が理事長である一般財団法人「日本再編イニシアティブ」という団体が委員会を作って作らせたものであるということだ。
なんだこれは。
確かに民間団体の調査であるには違いない。
しかしそれは民間団体の一つに過ぎず、決して政府に対する国民という意味での民間ではない。我々の立場を代弁しているものではない。
親米保守の一握りのグループに手によるまったくの私的な報告書だ。
どうりでその報告書の中には次のような記述がある。
産経新聞だけが書いているのも象徴的だ。
「・・・自衛隊と米軍は震災直後から『日米調整所』を防衛省内などに設け救援や事故対応で連携。外務省や東電を交えた日米当局者の会議は防衛省内で開催された。22日に官邸主導の日米会合が立ち上がるまでの間、『日米間の調整を担ったのは自衛隊と米軍の同盟機能だった』。
報告書は日米同盟の今後の課題として『今回の事故と似通った事態が想定される核テロ攻撃時の運用態勢』構築の必要性を挙げている・・・日米防衛当局こそが『最後のとりで』だ・・・」(2月28日産経)
なるほどわかりやすい。
こんなものは原発事故調査報告書でもなんでもない。事故調査報告書の名を借りた日米同盟礼賛の広報文書だ。
それにしても思う。
政府や国会の事故検証報告書はなぜもっとはやく出来上がらないのか。
それが早く出ておればこんな民間報告書なるものが大きく報道される余地はなかったはずだ。
それにしても思う。
こんな一団体の報告書をあたかも民間を代表する報告書のように大きく取り上げる大手新聞各紙とはまともなジャーナリズムなのか。
偽メディアによる、偽原発調査報告書であると読み流せばいい。
この記事は 2012.2.28