日経ビジネスが、日本政府の大飯原発再稼働を世界のメディアがどう報道したのかを記事にしているので抜粋して紹介したいと思う。
欧州の反応
欧州メディアが批判した対象は大きく分けて3つある。1つは日本政府が反対運動を無視して、再稼働を決定・起動したことだ。
ドイツの日刊紙ヴェルト(Welt)は7月1日、次のように伝えた。「日本では大規模なデモや抗議行動は稀有だが、毎週金曜日、官邸前に数千人の市民が集まって抗議行動をしている。体制側メディアは長い間、こうした運動を無視してきた。しかし、ツイッターなどの新メディアを介して全国で参加者が急増。無視できなくなっている。ノーベル賞受賞者の大江健三郎や、映画『ラストエンペラー』の音楽を作曲した坂本龍一も運動に加わった」。
フランスの週刊誌ル・ポワン(Le Point、オンライン)は枝野幸男経産相の「決定するのが政治家の責務」との発言を受けて、それはつまり「専門家による警告や、与党議員の3分の1もの反対を押し切って決めることを指すのか」と問うた。
フランスの中道右派の新聞、ル・フィガロ(オンライン)は、専門家の知見と民意に反する尚早で危険な決定――この決定は首相と、大飯原発に関係する地方自治体の政治家、経産省下の原子力安全保安院だけで決めた、と断じた。
もう1つの批判の対象は、安全対策が十分ではない点だ。
南ドイツ新聞は「大飯原発の標高は福島原発より数メートル高いが、津波の防護壁はない。付近では1026年に巨大津波が記録されている」と伝えた。
フランスの週刊誌ル・ポワン(Le Point、オンライン)は6月18日、次のように解説した。「日本政府は『新しい安全対策は3年以内に講じる予定』として、安全確保なしで見切り発車した」。
3つ目のポイントは政府や関連する地方自治体が電力業界の圧力に屈したことだ。
ドイツの経済紙 ハンデルスブラット(Handelsblatt)や週刊誌フォークスは、「大阪市は、電力業界や政府から経済への悪影響を警告され、抵抗をあきらめざるをえなかった」と伝えた。前出のル・フィガロは6月16日、「日本政府は『夏のピーク需要に対応するため原子力発電所が必要』と説明するが、本音は日本の経済を守るため」と述べた。
一風、変わったところでは、ドイツの週刊誌シュテァン(Stern)がある。同誌は再生可能エネルギー開発が急速に進み、供給の一端を担いつつあることを示唆した。「再生可能エネルギー特別措置法』が施行された1日に、京都ほか複数の自治体でメガソーラーが運転を開始し、年内に2500メガワット――中規模の原発2基分――の供給を計画していることを報じた。
米国
7月1日のウォールストリートジャーナルは、日本の原発再稼働とそれに伴うデモの様子を詳報した――「電力不足と市民の抗議の間に揺れるノダの決断」に対し、推定10万人が反対デモに参加した。ワシントンポストは、時を同じくして国会の事故調査委員会が発表した報告書と絡め、「『人災』という批判の中での再稼働」と報道した。リベラルな論調で知られるニューヨークタイムズは、グリーンピース・ジャパンの佐藤潤一事務局長の「民意を無視した準備不足の再開」というコメントを紹介した。
興味を引いたのはワシントンポストが7月5日に掲載した論説だ。同紙は事故調査委員会の報告書を検討し、「フクシマの事故の原因はヒューマンエラーだったことが明らかになった」とし、『原発そのものが危険』と結論付けるべきではない、と指摘した。同紙は温暖化問題を重視し、どちらかと言えば原発肯定の立場をとっている。さらに日本政府と東電の馴れ合い体質を取り上げた。「原発は、政府と企業が一体となって厳格な枠組みを作り、運営することが必要だ。そのために公共への情報開示が必須となる。だが、日本はどちらも怠ってきた」と批判した。「我々はスリーマイルやチェルノブイリから学んだ。だが、残念なことに日本はそうではなかった」と断罪した。
米国では反原発の動きは目立たない。福島原発の事故後にも、大規模な反原発運動は起こらなかった。スリーマイル島事故を経験していることを考えると意外なことだ。CNNはその要因の一つとして、「米国の関係機関はメリットもリスクも含めて、あらゆる情報を国民に開示している。市民の多くが高い原子力リテラシーを持っている」点を挙げた。
最後に、中国とドイツの市民がSNSに書き込んだコメントを紹介する。「小さな島国で、しかも頻繁に地震があるのに、なぜこんなに多くの原発を建設したのか?」(微博)、「日本政府は新しい法律を作ったらしい。地震と津波を禁止すると」(シュピーゲル)。