東京新聞 2011.12.17
本来の「冷温停止」と似て非なる「冷温停止状態」という用語を事故収束に向けたキーワードに用い、批判を浴びてきた政府。この日は、その達成を理由に「事故収束」宣言にまで突き進んだ。
苦しい避難生活を迫られる人たちに配慮してか、サイト(福島第一の敷地)内の出来事に限っては「収束」とし、サイト外は「収束していない」という論法を持ち出した。
確かに福島第一の周辺は、除染もほとんど手つかずで、放射性物質を含んだがれきの中間貯蔵施設の設置も具体化しておらず、収束どころではない。
一方、福島第一の中も、とても収束とは言えないのが現状だ。日々原発を見ている現場の作業員たちは「収束などとんでもない」と口をそろえる。
「冷温停止状態」かどうかも怪しい。そもそも「冷温停止」は、単に原子炉が冷えているだけでなく、放射性物質を密封できて初めていえること。その定義は東電の保安規定に明記されている。
「冷温停止状態」の定義の一つは「圧力容器底部の温度が一〇〇度以下」。それは達成したが、炉内の別の場所は今も一〇〇度を上回るところがある。
圧力容器の底が抜けて、溶けた燃料が落下しているが、実際にどんな状態なのかも分からない。最後の“壁”である建屋も損傷。地下水の流入が止まらないが、海への流出を阻む遮水壁もできていない。高濃度汚染水は、いつ外部に漏れてもおかしくない状態だ。
実際、四日には放射性ストロンチウムを含む水が海に漏れたと判明。すると、政府の担当者は「水は関係ない」と抑制する対象ではないと言う。
収束と言いながら、原子力緊急事態宣言は解除されない矛盾も。「収束宣言」は政治的な節目にすぎず、実態は収束への道半ばだ。 (原発事故取材班)
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