原発輸出へ向け 原子力協定承認へ 事故の検証こそ先では
12月 3rd, 2011 | Posted by in 3 利権・推進派・御用学者 | 3 政府の方針と対応 | 3 東電 電力会社 原子力産業 | 4 他の原発全般中国新聞 2011.12.3
この矛盾をどう理解すればいいのだろう。原発輸出を可能にするヨルダン、ベトナム、韓国、ロシアとの原子力協定の締結が、今国会で承認される見通しとなった。
福島の原発事故で停滞していた原発輸出の動きが加速する。「脱原発依存」を掲げたはずの野田佳彦首相が、原発や関連技術の売り込みに率先して旗振り役を果たしている格好だ。
首相は「事故の経験や教訓、知見を国際社会と共有するのはわれわれの責務だ」と強調する。
だが事故は収束せず、検証も済んでいない。エネルギー基本計画の見直しも道半ばだ。拙速な輸出は国民の不信を増幅させるばかりか、各国の信頼も得られまい。
なぜ政府は急ぐのか。年内に発注先を決めたいヨルダン政府から手続きを急ぐよう強く迫られたことが理由の一つのようだ。
ヨルダンでは三菱重工業とフランス・アレバ社の企業連合が、ロシアやカナダ勢と受注競争でしのぎを削る。協定の締結が遅れることにより受注を逃すリスクを政府は恐れているのだろう。
福島の事故後、海外市場へとシフトする国内の原発関連メーカーへの配慮とも受け取れる。
だがヨルダンは地震多発国だ。建設予定地は内陸の乾燥地にあり、冷却水の確保が困難といわれてきた。解決できるのだろうか。
経済成長に伴い電力需要が増えているベトナムは、原発2基分を日本に発注する方針を固めている。だが予定地が国立公園に隣接していることや、事故のリスクについて住民への周知が不十分などの問題点も指摘されている。
国際環境団体が「拙速な協定の締結は無謀な原発輸出を促す」と反対するのも無理はない。
衆院外務委員会はきのう、民主、自民両党の賛成で協定の承認案を可決した。直ちに本会議で採決の予定だったが、反対に回った公明党に自民党が配慮し、先送りを求めた。
この際、国会は慎重に議論を重ねるとともに、政府は国民が納得できるよう説明を尽くすべきだ。
政府は、核保有国であるインドとも原子力協定交渉の進展で合意している。だが原発技術は軍事転用されるリスクがある。核拡散防止条約(NPT)への加盟が大前提だと強く求めることは、被爆国の責任でもある。
民主党政権は福島の事故に至るまで、「原発ビジネス」を成長戦略の柱に位置づけていた。
とはいえ輸出にはやる前に、やるべきことがある。まずは徹底的に事故を検証し、万全の再発防止策を講じていくことが、当事国としての責務にほかなるまい。
成長戦略というなら再生可能エネルギーも本命になりうる。政府はもっと積極的に民間の技術開発を後押ししてはどうだろう。
首相は就任直後こそ「脱原発依存」と口にしたが、最近は聞こえてこない。原発に対する姿勢がぶれてはいないか。いま一度、確かな言葉を聞かせてもらいたい。
You can follow any responses to this entry through the You can leave a response, or trackback.