朝日新聞 2011.11.23
震災と原発事故で延期され、7カ月遅れの実施となった地方選挙が、先週末で終わった。
福島県議選では多くの候補者が、除染対策や生活再建に加えて「脱原発」を訴えた。1週早かった宮城県議選では、停止中の女川原発のある選挙区で「原発ゼロ」を主張した新顔が、当選したのが目を引いた。
福島県議会では先月、こんな動きもあった。
県内すべての原発の「廃炉」を求める請願を、選挙前最後の本会議で採択した。「再稼働は認めない」としてきた佐藤雄平知事の姿勢から、さらに一歩踏み込んだのだ。
多数派の自民は、前日の委員会では不採択を求めたが、賛成に転じた。選挙を意識したとみられる。県はその後、復興計画に「全基廃炉」を明記する方針を固めた。
全国に目を転じても、3月以降、原発周辺のまちむらで、議会の意思表明が相次ぐ。
静岡県牧之原市議会は、10キロ圏内にある浜岡原発の「永久停止」を求める決議をした。
福井県小浜市議会は、期限を切っての「脱原発」を掲げた意見書を出し、原発が立地する隣の町の議会と、意見交換を始めた。同じ福井でも、高浜原発がある高浜町議会の意見書は「原発を堅持し、再稼働すべし」と国に求めた。
意見書や請願の採択をめぐって、意見が割れた議会も少なくない。3・11後の地域の未来を原発に託すかどうか、地方議会が真剣勝負の議論を迫られている、いや始めつつある、とは言えまいか。
これまで、ひとたび原発を受け入れた地域の議会は、その後は「追認機関」になりがちだった。関心は交付金や雇用に集まり、安全確保は国の責任だと片づける。少数の反対意見や危険性への指摘に耳を傾け、調べ、熟議する道すじは十分でなかった。その反省も必要だ。
住民を巻き込む議論を興し、多様な意見をまとめ、地域の意思決定をする。利害がかかわる周辺のまちとも連携をとる。再稼働の是非や安全協定の見直しなど、目の前に切実な課題がある。住民に近い所にいる地方議員の役割は、重い。
そもそも原発の運転や電力供給のあり方に対し、自治体が及ぼせる権限は小さい。だが住民の生活に深くかかわることを、国策と独占企業体だけに任せておいてよいのだろうか。
そうでなくても、地方議会の形骸化がいわれてきた。エネルギー政策に自治をどう取り戻すのか。議会が問われている。
朝日新聞
You can follow any responses to this entry through the You can leave a response, or trackback.