米軍のクラスター爆弾で全身に大けがをしたエーサヌラ君=アフガニスタン・カブールで2002年、藤生竹志撮影:
2011.10.21
クラスター禁止:米軸に「骨抜き」案 新条約を討議
【ブリュッセル斎藤義彦】不発弾が市民に被害を与えているクラスター爆弾の使用を全面禁止するクラスター爆弾禁止条約(オスロ条約)に対抗し、爆弾を大量保有する米国など非加盟国が中心となり、新型爆弾の保有や使用を容認する新条約を締結するよう各国に働きかけていることがわかった。新条約案に「オスロ条約の義務に影響しない」などの付帯項目を付けることで加盟国の切り崩しも進んでいる。会議出席者によると、オスロ条約を批准したドイツや日本などを加えた計約70カ国が新条約案に前向きな姿勢を示しており、規制の緩い条約ができれば、オスロ条約は空洞化する。
オスロ条約は加盟国を増やし、クラスター爆弾が非人道的兵器だとの認識が国際社会に定着。09年末の米軍によるイエメンでの投下や今年のカダフィ政権によるリビアでの使用が批判されるようになり、危機感を深めた米国などが新条約の策定を始めたとみられる。
新条約案は1980年より前に作られた不発率の高い古い爆弾を12年間の猶予を付けて禁止する一方、不発率が1%以下の新しい爆弾の使用を容認する。18年以降に旧型爆弾の使用をやめ不発率1%以下の爆弾を使う米国の方針と合致する。
新条約案は現在、ジュネーブで開催中のオスロ条約とは別の軍縮会議「特定通常兵器使用禁止制限条約」(CCW、加盟総数113)締約国会議=非公開=で25日まで討議中。新条約案採択は全会一致が原則で、米国はオスロ条約加盟国の切り崩しを進めている。
会議への参加が認められた、オスロ条約を支持する非政府組織(NGO)「クラスター爆弾連合」(本部・英ロンドン)によると、CCW加盟国の7割以上が新条約に賛同する姿勢だ。爆弾の使用規制に強く反対してきた米国、イスラエルやインド、韓国のほか、オスロ条約を署名もしくは批准した日本、フランス、ドイツ、英国、イタリア、オーストラリアなども理解を示しているという。
オスロ条約を主導したノルウェー政府は「骨抜きにされかねない」と批判している。しかし、オスロ条約非加盟国が法的に何の規制も受けていない状況を憂慮し、緩い規制の新条約案に賛成する国が増える傾向にある。
【ことば】クラスター爆弾禁止条約
クラスター爆弾の使用、製造、保有を禁じる条約で、10年8月に発効。クラスター爆弾は数個から数千個の子爆弾を広範囲にまく。大量の不発弾が発生し、紛争後も多数の市民を殺傷している。条約では、加盟国に条約発効後8年以内の備蓄の廃棄を定めており、加盟国は日英仏など111カ国に上るが、大量保有している米露中は参加していない。
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