河野太郎公式ブログ ごまめの歯ぎしり 2011.11.13
平成元年を100として、予算の主要項目の伸びをみてみると、さまざまなことに気づく。
減ってきたのは公共事業費と経済協力費ぐらいだ。とはいえ200に達するのは社会保障関係費ともう一つ。
このもう一つがくせ者だ。
平成元年からの二十数年間で最も伸びている予算項目は、社会保障関係費ではなく、科学技術振興費だ。300になる。
日本は科学技術立国だから、などという単純な理由で、基礎科学も技術も一緒くたにして、予算を増やしてきた。自民党時代の事業仕分けでも、科学技術立国などというお題目の下でつくられてきたさまざまな無駄にメスを入れた。
亀井善太郎元代議士がおもしろいことを言っている。「文部科学省支配の下で我が国の科学技術がどうなったのか、『原子力』を思い出せば明らかだ。原子力ムラと呼ばれる集団をつくり、特定の目的に合致したことでもなければ、科学としても科学技術としても認められない巨大な予算消化集団をつくってしまった。」
とことん真理を突きとめようという純粋な科学と、産業や社会に貢献するためにいつまでに何を達成するかという目標をはっきりさせて、それを達成できたのかをしっかりとレビューすべき技術開発が意図的に混同されて、科学技術振興予算が増やされてきた。
だからこの分野は最もきっちりと事業仕分けがなされなければならない。
衆議院の決算行政監視委員会では、政府の猛烈な横やりをはねのけて原子力関係の支出の仕分けをやる。そしてもう一つがスパコンの仕分けだ。
スパコン予算はきわめて怪しい。
日本のスパコンは、スカラー型とベクター型をあわせたものでなければならないというのが当初の文科省の主張だったのに、ベクター型のNECと日立が撤退し、あっという間に富士通のスカラー型のみのスパコンになった。
その際、スカラー、ベクターが必要だという当初の主張はどうなったのか。
誰がどういう理由でスカラー型、ベクター型の混合型を主張していたのか、なぜ、それがスカラー型一本になったのか、なぜ、NECと日立が撤退した時に再度、議論が行われなかったのか。
スパコンの開発そのものに関する議論がきわめて曖昧だ。
そして、自民党時代の事業仕分けから繰り返し問われている「なぜ一番でなければならないのか」という質問に、まだ文科省は答えていない。
この質問は、よく誤解されている。というよりも、スパコン村の住民が意図的に誤解されるような情報の流し方をしているのだ。
たとえば、論文を一番最初に出さなければならないのかとか、小さな粒子を探している時に一番小さな粒子を探すのか、二番目に小さい粒子でもいいのか等という質問ならば、一番でなければダメだろう。それは素人でもわかる。
が、このスパコンの一番でなければならないのかという質問は、そうした質問とは根本的に違う。
ここで問われているのは、一番速いスパコンを開発することでスパコンの技術を高めるという話ではない。
ここで問われているのは、日本の科学の進歩にとって、世界で一番速いスパコンが一台必要なのか、それとも二番目のスピードでもいいから複数台必要なのか、あるいは一番速いスパコンで、あるシミュレーションを行った場合と二番目に速いスパコンでシミュレーションを行った場合に、結果が出るまでに何分の差があるのか、その差を最終成果物が出るまでに埋める方法がないのか、ということである。
そういう質問であるということを理解した上で、論文を一番最初に出さなくてもいいのかというような質問のふりをして、一番を目指さなくてもよいではないかとは科学をわかっていない等と反論してみせる学者がいるが、予算を減らされたら困るという互いの傷をなめあっているだけだ。
スパコン村の中央には、文科省の情報科学技術委員会なるものがある。ここが問題の根幹の一つだ。
この委員になぜスパコンが必要なのかと尋ねると、文科省が必要だと言うから、という答えが返ってくる。
一部のスパコンユーザーが、文科省と組んでスパコンが必要だと騒ぎ、それをつくらせて使っているという構図が見てとれる。
スパコン、原子力をきっかけに利権化している科学技術振興予算にしっかりとメスを入れていきたい。
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