予断は許さないけれど、ストレステストのハードルが少しだけ高くなるようです。
記事を読んでも、ストレステストも耐震安全性評価もよく内容がわからないし、誰がどのように決めているのかもわかりません。福島事故をうけて、今後の原発の”安全”基準は、「安全ではありえない」という見解も含めて、国民的議論の上で決めなければなりません。国はそういう段階を一切すっ飛ばして、勝手に決め、勝手に動かそうとしています。
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産経新聞 2011.11.5
原発再稼働に向けたハードルがさらに高まっている。経済産業省原子力安全・保安院が、9つの原発について東日本大震災後の知見を踏まえた地震や津 波に対する追加調査を実施したうえで、耐震安全性評価に盛り込むことを近く指示するためだ。再稼働条件であるストレステスト(耐性検査)に反映される耐震 安全性評価には最低でも数カ月かかるが、新たな課題を突きつけられた9原発はさらに延びることも予想され、再稼働は遠のくばかりだ。(原子力取材班)
■新たな課題
保安院は東日本大震災の新たな教訓の一つとして、「複数の震源が連動して地震が起きたため、津波が重なりあって大津波を引き起こした」といった点を挙げている。
福島第1原発を襲った津波の高さは約13メートルに達した一方で、約10キロしか離れていない福島第2原発では約9メートルだった。宮城県沖と福島県沖のそれぞれ別の場所で発生した津波の到達時間の違いが、4メートルの差を生み出したと考えられている。
中部電力浜岡原発(静岡県)では、東海、東南海の連動地震による津波の高さを6~7メートルと推定していたが、保安院は「時間差による波の重なりや、より大きな規模の地震を考慮した解析が必要」と指摘する。
こうした連動地震と津波の評価は、浜岡のほか、北海道電力泊原発(北海道)や、東北電力東通原発(青森県)でも課題とされた。
■「400年前」の調査
若狭湾に立地する関西電力大飯原発など福井県の5原発では、震災後に見直された古文書の記述から、約400年前の大津波の調査が課題として浮上した。
「高い山にも似た大波が猛烈な勢いで襲いかかり、大量の家屋と男女を連れ去り、いっさいのものが海にのみこまれてしまった」
安土桃山時代のポルトガル人宣教師、ルイス・フロイスの「日本史」の一部だ。「若狭湾では大きな津波被害はない」とされてきた“定説”が覆されたことで、関電などは津波堆積物の有無を調べる掘削調査の結果の反映を迫られることになった。
再調査では、これまで「動かない」とされてきた周辺断層も対象になる。
日本原電東海第2原発(茨城県)は、震災の影響で地殻変動が起き、地下の地盤の力のかかり方が変化し、断層評価の見直しが求められた。
東通原発や日本原電敦賀原発(福井県)は、活断層と見なしていなかった敷地内の断層の再評価も必要となるなど、新たに複数の課題を抱えることになった。 ■拭えぬ不透明感
耐震安全性評価について、保安院は「評価の知見はストレステストに反映する」としている。9原発22基のう ち、ストレステストに着手しているのは、すでに提出済みの関電大飯原発を含め15基あるが、耐震安全性評価の過程で想定する地震や津波が変われば、ストレ ステスト自体の見直しが迫られる可能性もある。
耐震安全性評価とストレステストの関係が判然としない状況に、東京工業大の山中浩明教授(地震工学)は「新しい知見に基づく評価を踏まえずに、ストレステストの結論を出すことは拙速だ」と警鐘を鳴らす。
保安院は「ストレステストへの影響は、原発ごとに判断する」と言葉を濁すだけで、再稼働に向けて不透明感は一層増している。
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耐震安全性評価(バックチェック) 平成18年に原発の安全性の基準となる「耐震設計審査指針」が改定されたことを受け、古い指針で建設された原発の安全 基準を見直す作業。事業者の見直しを、原子力安全・保安院が妥当かどうか評価する。東日本大震災で作業は中断していた。評価が終了しているのは、東京電力 の柏崎刈羽1、5、6、7号機と日本原子力研究開発機構の高速増殖原型炉もんじゅだけ。
産経新聞
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