東京新聞 2011.10.25
経済産業省原子力安全・保安院は二十四日、福島第一原発1号機でシビアアクシデント(過酷事故)が発生したときに使う東京電力の手順書などを公開 した。東日本大震災に伴う大津波で、手順書では想定していなかった電源盤の水没が起き、機器類の操作もできず、状況もつかめなくなり、手順書そのものがほ ぼ役に立たなくなったことが浮かび上がった。
公表されたのは、1号機で一般事故や過酷事故が起きた際の対応をまとめた二種類の手順書の一部のほか、東電が手順書の記載と実際に行った操作を比較対照した書面。
これらによると、三月十一日の地震直後は一般事故の手順に従って、原子炉の緊急停止により、制御棒が適切に挿入されたことや、原子炉の水位や圧力などを確認。手順書通りの対応だった。
しかし、発生から約五十分後に津波に襲われ、交流電源だけでなく、電源盤も水没し、中央操作室で操作できるはずの弁が操作できないばかりか、状況も分からなくなった。
一般事故の手順書では、外部電源やディーゼル発電機が使えない場合は想定していたものの、バッテリー電源による最低限の操作や状況表示までストップすることは想定していなかった。
過酷事故の手順書には、消火系の配管を使った注水冷却や、燃料損傷後に格納容器の蒸気を抜いて圧力を下げる「ベント」など、作業別に弁の開閉などの手順や配管の系統図を示している。
しかし、弁の多くは電動で、やむなく運転員は原子炉建屋に入って弁を操作することになった。既に放射線量が高まっており、作業は難航した。
過酷事故の際でもある程度使えると想定していた各種計器も、ほとんどが使えなくなった。原子炉内の状況がはっきり分からないまま、翌十二日午後の水素爆発に至った。
東電の松本純一原子力・立地本部長代理は「今回の事故では電源設備が津波を受け、復旧が困難を極めた。電源喪失を想定していなかったが、われわれの判断が甘かったかどうかは、議論があると思う」と述べた。
手順書は衆院科学技術・イノベーション推進特別委員会が提出を要求。東電が一部を除いて黒塗りして情報公開を拒んでいた。原子炉等規制法に基づいて受け取った保安院が公開するとともに同委員会に提出した。
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