偽りの安全イメージをふりまく NHK「あさイチ」。 その調査食材に注目してみた。
10月 24th, 2011 | Posted by in 3 マスコミ・報道 | 3 隠蔽・情報操作と圧力 | 5 オピニオン秋場龍一のねごと 【ただちに危険だ! 原発通信】№17 2011.10.24
10月17日(月)の朝。ぼくは朝食後、NHKの「あさイチ」を観ていた。
この番組は、あかるいスタジオの雰囲気とざっくばらんな演出のなかで、「NHKは視聴者に役立つ情報提供しています」みたいな番組コンセプトで構成されている。そう「みなさまのNHK」を印象づける朝の看板番組なのである。
そしてこの日のメインテーマは「放射線大丈夫?日本列島・食卓まるごと調査」。
この番組のよくある構成パターンは、「放射能汚染やばいんじゃない」という一般市民の気持ちを代弁するようなテーマをもってきて、最後に御用学者の「1年間食べ続けても安心です」「危険はありません」などというコメントで締めて、「放射能汚染なんてたいしたことはありません」「健康には影響はありません」的な印象を残してエンディングするというものだ。
このパターンは夜7時半からの「クローズアップ現代」でも踏襲されている。
これらの番組では、放射能汚染の影響を低く見積もって原発事故の影響はたいしたことはないという印象づけに躍起なるところから、NHKって結局は原発推進なんだ、ということが露呈される。
でも、いっぽうNHKのドキュメンタリーではETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図 ~福島原発事故から2か月~」など、その原発事故被害の実相を伝えようという姿勢はジャーナリズムの在り方として高い評価があたえられるだろう。(なおETV特集「果てしなき除染~南相馬市からの報告~」10月30日(日)放送予定)
NHKの七沢潔、大森淳郎、増田秀樹の各氏の仕事ぶりは朝日新聞連載の「プロメテウスの罠」で紹介されている。このNHKの制作者とこの連載を書いた依光隆明氏に、ぼくは満腔から感謝する。
NHKも朝日新聞も、その軸足は「原発推進」にあるものの、こうやって本来の仕事をまっとうしているジャーナリストもいる。
ぼくはこのあたりは一概的にNHKだから朝日新聞だからダメというのではなく、その番組や記事一つひとつにたいして是々非々で評価している。
テレビや新聞の制作現場では、それほどあからさまな言論統制というものはないものだ。制作者個々がテレビ局や新聞社の空気を読むとか、プロデューサーやデスクの顔色をうかがうとかはあるかもしれないが、いちおう局員や記者の「表現の自由」はあるものだ。
もちろん、テレビ各局や新聞社、週刊誌発行元によってその「毛色」や「色あい」があって必ずしも「全面自由」とはいかないことは断っておかなければならないが。
さて、本題にもどろう。そう、10月17日NHK「あさイチ」である。テーマは「放射線大丈夫?日本列島・食卓まるごと調査」。
福島や日本各地域の一般家庭の1週間の食事から、果たしてどれだけのセシウムが検出されるか調査してみました、というものだ。
ぼくは、番組の方向性として、「たいしたことはありません」「この程度の放射線量な健康被害は考えられない」というようにもっていくだろうと予想した。
そしてその調査結果とは?
ピンポーン! ぼくの予想はみごとに的中。
食材の放射能汚染に気をつけている、いない、にかかわらず、また福島県(郡山、須賀川)在住の二つの食卓もそれ以外の地域の食卓からも「検知なし」か「微量」のセシウムしか検出されなかった。
そして、この調査に協力した家庭の奥さんたちの安心した笑顔や、番組スタジオの出演者たちのあかるい雰囲気、それに出演の専門家のコメントによって、「なんだ、放射能汚染なんてたいしたことないんだ」「これなら心配しなくてもいいだよね」みたいな色で染めあげられたではないか。
おそらく、いつもの調子でうっかりテレビを観ている全国の視聴者は「食卓は安全だ」という印象をもつにちがいない。だけど、この番組、トリックと言っちゃあなんだけど、この調査手法がかなりあやしい。
それは……
①調査対象となった福島県の二つの家庭の選定のありかた
②具体的な食材の提示
である。
まあ、調査した福島の家庭から汚染食材がでなかったのだから、他の地域は安全だよねという印象をあたえるのだが、こんなたった二つの家庭の調査で実相をあらわすデータとなりうるかということ。
それと番組放送中にこれらの調査対象となった食材の具体的な提示がはっきりとわからなかったことだ。とりわけ知りたい福島の二つの家庭の食材について、明示されなかったことである。
そこでNHKの「あさイチ」のホームページhttp://www.nhk.or.jp/asaichi/2011/10/17/01.htmlにいってみた。
するとあったよ。調査された家庭の「詳しい献立」が。
この献立表をごらんいただくと一目瞭然だが、野菜などの一部は福島産だけど、海産物や豚肉などは長崎、熊本、北海道など福島から遠い地域が多く、ワカメは韓国産(これなんか、食材にかなり気を使っているわが家と同じ選択)などが産地になっている。
とくに放射能汚染がきわだつキノコ(ブナシメジ、シメジ)は二つの家庭とも「香川産」。この食材と産地の選択って、偶然にしては……。
これじゃ、セシウムは出ないだろうし、出ても微量というものだ。
むしろ、これらの食卓からセシウムがどんどん出たら、日本中が汚染されていることになって、日本国中どこも住めないことになっちまうよ。
ニッポン全国の「あさイチ」視聴者のみなさん、あの17日の番組だけで、放射能汚染された食材はわが家の食卓にのぼらないと安心するのは考えものですよ。
チェルノブイリ事故を経験したロシアの研究家であるバンダジェフスキーは、内部被曝がおよぼす医学的影響について「どんな量の放射性セシウムでも発病の原因になりうる」と警告を発していることを肝に銘じることです。
You can follow any responses to this entry through the Responses are currently closed, but you can trackback.
京都生協の働く仲間の会 様 いつもNHKの番組を視聴いただき、ありがとうございます。 ご連絡いただきました、あさイチ「食卓まるごと調査」に関してですが、今週の木曜日、11月24日の朝8:15から番組の冒頭で、先日放送したデータについての修正を放送する予定にしております。 ご覧いただければ幸いです。よろしくお願い申し上げます。 NHK「あさイチ」担当NHKふれあいセンター(放送)