毎日新聞 2011.10.17
野田佳彦首相が17日の毎日新聞のインタビューで、原子力発電所の新増設を一部容認する姿勢を示した背景には、中国電力が建設中の島根原発3号機(松江市)の工事の進捗(しんちょく)状況が、4月末時点で約93%に達した事情を踏まえた現実的な判断がある。ただ首相は「全くまっさらなところから新しいものを作るのは極めて困難」とも指摘。新増設を推進する考えとは一線を画す考えも強調した。
首相は原発の新増設について「中国地方などで進んでいるものもある。そういうものも含めて個別の判断になっていく」と述べた。あえて「中国地方」に言及し、島根原発が念頭にあることを示唆した形だ。首相は原発の再稼働についても「地元の理解や国民感情などを踏まえて政治判断する」と述べており、来夏の電力不足などをにらみ、短期的に原発に依存するのは避けられないと判断したようだ。
島根原発3号機は05年に着工、4月末現在で93.6%まで工事が進んでいる。中国電力は当初、来年3月の営業運転開始を予定していたが、東京電力福島第1原発事故を受け、中国電力は5月、津波対策強化のため営業開始の延期を発表した。3号機は震災前の今年2月、制御棒の動作で不具合が判明したため運転開始を3カ月遅らせて来年3月に延期しており、延期は2回目となる。
中国電力の苅田知英社長は9月16日の記者会見で、3号機について「発電に関わる機器の据え付けもほぼ終わっている」と述べ、地元の理解を得て営業運転を開始したい意向を示していた。
このほかに現在、新規立地で建設中または計画が具体的に進んでいるのは、Jパワー(電源開発)、東電、中国電力など4カ所で計6基ある。いずれも震災発生を受け、工事や計画は中断したままだ。
Jパワーが建設中の大間原発(青森県大間町)は37.6%まで工事が進んでいた。東電は青森県東通村で、東通原発1号機の17年3月の稼働を目指して建設中で、20年度以降に稼働予定の2号機も計画を進めていた。中国電力は上関原発1、2号機(山口県上関町)の建設に向けて、陸地の造成や海面の埋め立てなどの工事を行っていた。【野原大輔、久野華代】
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