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放射能検査 牛肉生産者に重荷

10月 10th, 2011 | Posted by nanohana in 1 放射能汚染 | 1 汚染の拡散 | 1 食品

朝日新聞 2011年10月10日

汚染稲わらを与えられた可能性のある牛が県内で流通していたことを示す県の発表資料

東京電力の福島第一原発事故による牛肉の風評被害が、有数の産地の県内にも波紋を呼びつつある。全国的には、セシウムなどの放射性物質が含まれていないかを調べる検査の費用を生産者側に負担させる市場も現れている。県は国費による全頭検査を求めるが、国は慎重だ。

首都圏の牛肉流通拠点「東京食肉市場」は9月6日から、持ち込まれる全ての牛肉に放射性物質の検査を課した。1頭7500円の検査費用は 出荷者の負担。検査した肉には未検査の肉より高値が付いていたことなどが背景にある。寺内栄司取締役は「安全な食品を消費者に提供するべきだと判断した」 と話す。

県内からは年間1千頭を東京に出荷している。JAさがによると、県産牛肉の現在の平均価格は70万円強。担当者は「値段の1%も検査費がかかるとは痛い」とこぼす。

県内には、肉の汚染原因とされる放射性セシウムを含む稲わらの流通例はない。むしろ県産牛は無検査で香港やマカオに輸出され、その量は4~8月に7・7トンと前年並み。原発事故の影響はうかがえず、畜産関係者には「なぜ佐賀の牛肉に検査が必要なのか」との声も根強い。

だが、消費者には検査済みの「ブランド」は効くようだ。小売り大手イオンは、7月末に販売する国産牛肉の6割を占めるプライベートブランド「トップバリュ」の自社検査を実施。牛肉消費が低迷する中、8月は前年並みの売り上げを確保したという。

古川康知事は9月15日に上京し、農林水産省や厚生労働省などへ牛肉の検査に関する要望書を提出した。全国統一で全頭検査をするなどの態勢を確立し、経費は全額国が負担をするという内容。風評被害の拡大防止策や牛肉消費のPRも求めた。

県によると、厚労省は「国による全頭検査は難しい」と明言。農水省の筒井信隆副大臣には知事が「私たちが『出回っているものは大丈夫だ』と説明できるように、国の責任でやってもらいたい」と訴えたが、筒井氏は「検討する」とだけ答え、慎重だったという。

農水省食肉鶏卵課は「検査には商品をアピールする側面があり、税金でその手伝いをすることはなじまないのでは」としている。

汚染稲わらの流通が確認されるなどした16道県のうち15県が、公費負担で全頭・全戸検査を実施している。

地元で食肉処理をするものに限っている県が大半だが、「松阪牛」を擁する三重県は、県外で処理する牛にも1頭2万円を上限に検査費用を補 助する。9月の県議会で1億円の予算が可決された。栃木県や島根県も県外出荷分の検査費用の補助をしている。この3県は、負担分を東京電力に賠償請求する ことを検討している。

佐賀県内では汚染稲わらが見つかっていないことから、賠償請求はできない。県は「オールジャパンで国に検査態勢の確立を要請したい」(県流通課)とのスタンスだ。

【取材後記】
食品偽装事件の取材経験などから、日本社会は、報道機関も含めて食品のリスクと付き合うのが苦手だと感じる。日本でだけ続く牛海綿状脳症(BSE)の全 頭検査は、非科学的との批判を受けながら、安心を買うために巨費をのみ込み続けている。「検査済み」と「未検査」。売り場に並べば検査済みの肉に手が伸び るのが人情だが、果たしてそれだけで決めていい問題だろうか。(波多野陽)

朝日新聞

 

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