地球と7代先のこどもたちを元気にしてゆく情報発信サイト
Header

総合資源エネルギー調査会に反原発派ら5委員を新たに任命 武田徹×宮台真司

10月 9th, 2011 | Posted by nanohana in 3 今後の電力・原子力政策・行政 | 3 利権・推進派・御用学者 | 3 官僚 | 3 政府の方針と対応

ビデオニュース・ドットコム 2011年10月8日

武田徹氏 宮台真司氏
武田徹氏 宮台真司氏

鉢呂敏雄・前経産相が辞任した際に取りざたされた総合資源エネルギー調査会・基本問題委員会のメンバー追加問題が22日までに決着した。最終的に5人の「反原発派」「発送電分離派」を加えた22人によって、今後の日本のエネルギー政策が審議されることとなった。

この委員会は経産大臣にエネルギー政策についての助言を与える諮問機関で、基本問題委員会は福島第一原発事故を受け、日本のエネルギー政策のあり方を基本 から議論するために、この6月に設置が決まったもの。既に環境ジャーナリストの枝廣淳子氏や京都大学の植田和弘教授などいわゆる「反原発派」の委員の就任 が内定していたが、委員17人のうち14人は基本的に原発推進派と見られ、特に脱原発の立場を取る菅直人首相周辺からは委員会の中立性が疑問視されてい た。

今月、「死の街」、「放射能つけちゃうぞ」などの発言で経産相を辞任に追い込まれた鉢呂氏は、辞任直後のメディアとのインタ ビューで、同委員会に反原発派を9人から10人を新たに任命する意向だったことを明らかにした。このため、鉢呂氏から経産相を引き継いた枝野幸男氏の人選 が注目されていた。

新たに委員に任命された5人は、飯田哲也環境エネルギー政策研究所長、大島堅一立命館大学教授、伴英幸原子力資 料情報室共同代表、八田達夫大阪大学招聘教授、阿南久全国消費者団体連絡会事務局長。八田氏を除く4人は、いずれも原発に反対する立場を取ることで知られ る。また八田氏は電力の発電・送電分離論者として著名だ。

飯田氏や大島氏の委員任命を画期的と歓迎する向きもある一方で、新たな5人を加えても、委員会内の力関係は圧倒的に原発推進派が多数を占める以上、結論は見えているとの指摘も聞こえてくる。

最終的には委員会の審議が公開されるかどうかが重要になってくるとの見方が強い。総合資源エネルギー調査会・基本問題委員会のあり方について、ジャーナリストの武田徹と社会学者の宮台真司が議論した。

武 田: 総合資源エネルギー調査会の委員が誰になるのかということが、鉢呂氏の辞任問題も含めて話題になっていたのですが、正式な任命はまだですが、方針は 決まったと報じられています。鉢呂氏の時には9~10人くらい新しく反原発派をいれると考えられていたのですが、枝野氏に交代、脱原発路線で新たにし5人 が委員に入ったということになります。

宮台: キーパーソンとしては、飯田哲也さんと大島堅一さんが入ったことが大きなニュースですね。

鉢呂さんが、今回入った5人の他に恐らく更に5人を含む10名の名前が入った「鉢呂リスト」を基に、翌日この総合エネ調の基本問題の委員分を公表しようと していた矢先に、「放射能がうつる」問題で、真偽のほどは定かでないネタによって辞任を迫られるということがありました。今回の5人のメンバーを加えて も、まだ原発推進派の方が5~6人多いんですね。委員会が公開で開かれていればまだしも、非公開である場合は、例えば多数決によって委員長一任が決まった りするなど、両論併記ならざる原発推進的な答申が出てくる可能性が今回は予想されるので、これを公開にするということにどうしても僕たちはこだわっていく 必要があります。そこが一つポイントになります。

武田: 議事要約でも駄目ですね。

宮台: そうですね。

武田: 飯田さんも大島さんも自分で発信もできる人ですから、そういう意味では中のことが出てくるという意味では入ってくれただけでもありがたいということはあるのではないでしょうか。

ただ、僕からすると原発推進派、反対派ということで最初から色分けされていることがどうなのかなと思うところもあります。

宮台: 陣営対立と誹謗中傷みたいな巷のコミュニケーションを、火に油を注ぐような人選を、要するにそういう風にしかならないところが辛いところですね。

武 田: 例えば、寺島実郎さんはリベラルな人ですが、原発に関しては推進派と言われていますよね。寺島さんの企業人としてのキャリアを考えればIJPCとか 石油問題で相当懲りたというようなことが反映して恐らく今の立場にいるのだと思います。やはりそういった文脈を読んでいった方がいいかなと私は考える立場 なので、推進派、脱原発派何人というような分け方で力の関係を見ていくことも大事だと思いますが、原子力の問題を考える上ではもうちょっと細かく見ること も必要だと思います。

宮台: もちろん、その通りですね。僕が以前から申し上げていることは、原発の安全性とかコストと言われている ものはすべてものすごく短い期間だけを想定していて、例えば、30年以内に東南海地震が起こる割合とか首都圏直下型地震が起こる割合がそれぞれ60数%、 80数%などと地震学会で言われていますが、例えば50年のスパンで考えた場合のコストやリスクや安全はどうかなど、どのタイムスパンでとるかによって変 わってきます。どういうタイムスパンで話しているのかをはっきりしていただければ、僕はそれだけでも十分だと思うんです。

武田: 時間の問題はまさにそうだと思いますが、やはり議論を単純化してしまうと見えないものがあると思います。今、脱原発を求めているが故に、逆にそこの議論をあまり単純化してしまうと本当の意味で脱原発ができなくなってしまう可能性を私は危惧しています。

また、細かく見る必要があるとはいえ、今回の総合資源エネルギー調査会のメンバーの人選もすごく重要だと思います。ここで決まってしまうと日本のエネル ギー政策のかなりの部分が縛られることになると思うので、脱原発出来るか出来ないか、あるいは再生可能エネルギーにどれくらい踏み込めるかということが決 まってしまうと言われていますね。

宮台: そうですね。この答申に基づいて閣僚会議で最終的な決定をするということですが、この答申 を無視した閣僚会議の結論は出ないということでしょうから、両論併記であれば政治決着になり得るのですが、原発推進、自然エネルギーはたいしてアクセルを 踏まないということになると、それに逆らうような政治的決定は出来なくなるということです。

武田: ある意味ではエネルギーの問題を単純化する構図になるのですが、それを避けたいので、そのためにはどうすればいいかというとこの二次を細かいところまで出してくれるというのが大事かもしれないです。

出演者プロフィール
宮台 真司(みやだい・しんじ)首都大学東京教授、社会学者
1959年仙台生まれ。東京大学大学院博士課程修了。東京都立大学助教授、 首都大学東京准教授を経て現職。専門は社会システム論。(博士論文は『権力の予期理論』。)著書に『民主主義が一度もなかった国・日本』、『日本の難 点』、『14歳からの社会学』、『制服少女たちの選択』など。

武田 徹(たけだ・とおる)ジャーナリスト
1958年東 京都生まれ。82年国際基督教大学教養学部卒業。89年同大学大学院比較文化研究科博士課程修了。84年二玄社嘱託として編集・執筆を担当、89年よりフ リー。著書に『殺して忘れる社会』、『私たちはこうして「原発大国」を選んだ』など。07年より恵泉女学園大学文学部教授を兼務。

※各媒体に掲載された記事を原文のまま掲載しています。

 

You can follow any responses to this entry through the You can leave a response, or trackback.

Leave a Reply

Bad Behavior has blocked 160385 access attempts in the last 7 days.