朝日新聞 10月2日
「脱原発」映画上映に施設貸さず 鹿児島・出水
西山正啓さん
福島第一原発事故後の脱原発を求める市民運動を記録した映画「脱原発 いのちの闘争」の上映をめぐり、鹿児島県出水市が公共施設の利用を許可しなかった ことが1日、わかった。上映を計画した関係者は「タイトルが政治的、と市に指摘された」としているが、市側は「政治的、とは言っていない。他の市施設の利 用を勧めた」としている。
映画は福岡県古賀市在住の記録映画作家西山正啓さん(63)が監督した110分の作品。九州電力の情報公開のあり方や原発の安全対策に疑問を深めた市民 の抗議デモや、川内原発(鹿児島県薩摩川内市)3号機の増設予定地でウミガメの保護に取り組む住民などを記録しており、大阪、福岡、北九州など各地で上映 されている。
薩摩川内市に隣接し、市域が原発の30キロ圏内に入る出水市での上映を計画した同市の自営業永池美保さん(49)によると、地元の市民交流センターで 10月下旬に上映会を開くことを決め、9月28日に窓口で仮予約。センターは市民の交流や商店街活性化を目的に2009年、市が整備した。
だが2日後、窓口担当者からセンターの使用について不許可の連絡があった。永池さんがセンターを所管する市商工労政課に電話で理由を尋ねたところ、担当 者は「タイトルが問題です」と答え、さらに「『闘争』が政治的」と指摘し、「上の判断」と答えたという。永池さんは「闘争という言葉についてしばらく議論 になったので、印象に残った」と話す。
センターの使用許可要領では、「特定の宗教や政治団体の宣伝及び勧誘の色彩の強い利用目的と認められる場合」は不許可と明記されているが、市民運動の会合や記録映画上映は不許可の対象になっていない。
担当者は朝日新聞の取材に「施設の目的に照らして(利用は)非常に厳しいと答えた。タイトルも話題になった」と認める一方、「政治的だとか、上の判断と は言っていない」と説明。上映会による集客が「市民の交流や商店街の活性化」につながる可能性もあることを認め「思いが至らなかった」と話した。また上司 にあたる産業振興部長は「もう少し慎重に対処すべきだった」と話した。
監督の西山さんは「言論や表現の自由の封殺だ」と批判している。山口県出身で30年以上前に記録映画の世界に入った。水俣病被害を撮り続けたことで知ら れる故土本典昭監督の助監督を務め、潜在被害を掘り起こすため、土本さんと熊本県・天草地方などの漁村を100カ所以上回る活動もした。沖縄にも20年以 上通い、在日米軍基地被害と闘う市民の姿を記録し続けている。(田中久稔)
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