週プレNews [2011年08月11日]
8月3日、農林水産省は間もなく収穫期を迎えるコメについて、収穫の前後2段階で放射性セシウムを調査すると発表した。調査により暫定規制値(1キロあたり500ベクレル)を超えた地域のコメはすべて廃棄処分を義務づけ、農家の損害は東京電力に損害賠償請求する。他の食品より綿密なチェック体制で、主食であるコメの安全を確保したい考えだ。
とはいえ、局地的に放射線量が高いホットスポットまで考慮すると、すべての地域の汚染状況を把握するのは困難を極める。しかも、検査から漏れてしまった“被曝米”はかなり巧妙な方法で日本中の食卓に並んでしまう可能性が高いという。『コメほど汚い世界はない』(宝島社)の著者であるジャーナリストの吾妻博勝氏はこう語る。
「今、福島県内のある業者のもとに、『新潟県産』や『栃木県産』など他県の名が表示された2010年産米の30キログラム用空き袋が続々と集まってきています。精米(白米)にする前の玄米が入っていたもので、すべてJAが検査したことを示す検印入り。もちろん、今年収穫される福島県産玄米を詰めて、被曝リスクのない安全な他県産米として売りさばくためです」
言うまでもなく、こうした偽装例はごく一部の極端な例。しかし悪徳業者にとって、格安で仕入れられる福島県産のコメが“利ザヤ”を稼ぐ格好の商品であるというのも、残念ながら事実なのだ。
「1999年9月、茨城県東海村JCO臨界事故の際にも、被曝米の一部がコメ業者の間で横流しされ、最終的には首都圏のスーパー、量販店などですべて『千葉県産』『埼玉県産』の新米コシヒカリ100%として売り払われました。今回は、こうした業者が全国に出てくるかもしれません。震災の影響で東北地方の水田はダメージが大きく、コメ不足が深刻になれば福島県産米でも『通常の半額以下なら買う』という卸業者側のニーズが確実に生まれるはず。悪質な業者なら安く購入した福島県産のコメを県外産に偽装し、通常の価格で販売して儲ける手法を取るでしょう。それらの偽装米はスーパーやディスカウントショップに並ぶことになります」(吾妻氏)
すでに8日には72年ぶりとなるコメ先物取引の試験上場も行なわれ、東日本大震災の影響や豪雨によるコメ不足を見込んで、買いが優勢となった。“汚染歴ロンダリング”を企む悪質な業者にとって、今年はボロ儲けの一大チャンス。国や県による、より一層の監査が必要だ。
(取材/有賀 訓、取材協力/興山英雄)
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