The Journal 高野論説 7月15日
今週の『週刊プレイボーイ』は「居座る菅をあえて応援したくなる理由」と題した記事を掲げ、「確かに、不人気で政権運営能力にもペケ印がついているけれ ど、歴代総理がビビッて言い出せなかった脱原発を口にし、原子力から再生可能エネルギーへのシフトを本気で実行しようとしているのは菅首相が初めてだ」と 書いた。記事中には、6月30日付本論説でも触れた作家の矢作俊彦も登場し、「電力会社と政界と官僚、マスコミにまたがる『電力権益』側にとって、菅は人 間爆弾のようなもの。実際、彼が浜岡原発に停止要請を出した直後に永田町が一斉に”菅降ろし”に走った」「上手にくすぐって脱原発に猛進させればいいんで す」と語っている。
それに応えた訳でもあるまいが、その菅首相は13日の記者会見で、昨年6月に閣議決定した「2030年に原発の発電比率を53%にする」としたエネルギー基本計画を白紙撤回し、「段階的に原発依存度を下げ、将来は原発がなくてもやっていける社会を実現する」と言明した。
マスコミは相変わらず、「場当たり」「無責任」(日経)、「実行力に疑問」(毎日)、「政権延命のための人気取り」(東京)などと、ほとんど常套 化した菅批判の言葉を見出しや社説に散りばめたが、まずは、週刊プレイボーイの言う通り、脱原発を言明した初めての総理大臣としてその蛮勇をまっとうに評 価すべきではないのか。
微妙なのは、まさに13日付朝刊で大軒由敬論説主幹による「提言・原発ゼロ社会/いまこそ政策の大転換を」を掲げて、社を挙げて脱原発路線に踏み切ったばかりの朝日新聞で、14日付では、
▼1面トップで「首相『将来は脱原発』/具体的道筋明言せず」との見出しを掲げ、
▼3面に「方法と根拠示せ」という科学医療エディター=上田俊秀の論説を載せ(何を言ってるんだ、大軒論説だってろくに具体的な道筋を示していないじゃないか)、
▼社説では「政策の大転換である」「首相の方針を歓迎し、支持する」「首相が交代した後も、この流れが変わらぬような道筋をつけてほしい」と言い、
▼さらにその下の「社説余滴」欄では松下秀雄論説委員が「『菅おろし』にみる政治の病」と題して、「『菅おろし』の過熱ぶりに強い違和感を覚える」 「指示が遅い、内閣の足並みを揃えてくれ…。それを批判するのは当然としても、『とにかく辞めろ』と騒げば、原発を守りたい人たちと同じ動きになる。 脱原発に向かう次のリーダーの目星もつけずに菅おろしを急げば、原発推進派を利する」と書いている(おいおい、朝日の社内の足並みを揃えてくれよ)。
▼加えて、社説の右隣の「声」欄では、「辞めさせれば、それでいいか」と題した47歳会社員の投書をトップに載せている。「1年くらいは菅さんに頑 張ってもらっていい」「議員たちは、菅首相を非難する時間があったら、自身の日本再生ビジョンを示してほしい」と(議員たちだけでなくメディアも自身のビ ジョンを示すべきですね)。
何とも不思議な紙面構成だが、朝日も、菅さえ降ろせばたちまち世の中がよくなるかのように思い込んだ「政治の病」を克服しようともがいているということである。
1年は無理かもしれないが、菅首相には、暴走と言われようと何と言われようと脱原発の道を猛進してこの国が後戻り出来ないようにして貰いたい。▲
元の記事は The Journal 高野論説 7月15日
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