1号機7センチ、2号機10センチ相当
毎日新聞 2011年5月25日 東京朝刊
東京電力が24日公表した福島第1原発2、3号機で炉心溶融があったとする報告書の中で、1号機は 原子炉圧力容器の外側にある格納容器に直径7センチ相当の穴、2号機では格納容器に直径10センチ相当の複数の穴が開いている可能性が初めて示された。東 電は炉心溶融による2、3号機の圧力容器の損傷について「限定的」としているが、高濃度の汚染水がタービン建屋に漏れ出すなど、圧力容器やその外側の格納 容器の健全性は元々疑問視されていた。東日本大震災から2カ月半。対応に問題はなかったのか。事故収束に向けた工程表の履行も危ぶまれる。【平野光芳、八 田浩輔、久野華代】
細野豪志・首相補佐官は24日夕の会見で、「見込みの甘さがあった」と陳謝。「引き続き冷却し冷温停止を目指す。解析に時間がかかるのはやむを得なかった」と釈明した。
報告書は、2、3号機の冷却システムが停止し、燃料の出す熱で水が減り、圧力容器内の燃料棒(長さ約4メートル)下部まで水位が低下したと指摘。(1)燃料棒の一部が水につかった場合(2)水位が回復せず、燃料が露出し続けた場合の2通りでシミュレーションした。
2号機は地震から77時間後の14日午後8時ごろ、3号機は42時間後の13日午前9時ごろから炉心の損傷が開始。両機とも、(1)の場合は燃料 の半分程度が圧力容器の底に落下し、残り半分は本来の位置にとどまった、(2)の場合は大部分の燃料が落下した--と結論付けた。
東電は「(2)の方が現実に近い」とみており、2号機では101時間後の15日午後8時ごろ、3号機では60時間後の14日午前3時ごろに燃料の 大部分が圧力容器の底に落下する炉心溶融(メルトダウン)が起き、それぞれ6~8時間後に圧力容器が破損した。2号機では計測された圧力データから、格納 容器に10センチ相当の複数の穴が開き、1号機で7センチ相当の穴が開いている可能性が浮かんだ。
1~3号機では水素爆発が発生したが、燃料棒損傷で生じた水素の量を、1号機800キロ、2号機400キロ、3号機600キロと推計した。また、 冷却システムが停止し、注水を開始するまでの数時間で、燃料棒を溶融させる3000度近くに達した。吉田正・東京都市大教授(原子炉工学)は「最初の対応 が将来の何カ月にも影響している」と述べ、東電や政府が日ごろから深刻な事態を視野に入れていたかどうかという姿勢を問題視する。
気になるのは事故収束への影響だ。
圧力容器底部の実測温度は2、3号機で100~170度、1号機で100~120度となっている。燃料が溶けて圧力容器の底にたまり少量の水でも冷却されているという皮肉な事態だが、大規模な放射性物質の放出はないと説明する。
経済産業省原子力安全・保安院は24日、「形状がどうあれ、燃料が圧力容器内にとどまって冷却されている。収束の工程表に大きく影響しない」としている。
しかし、小林圭二・元京都大原子炉実験所講師(原子核工学)は「工程表は圧力容器の破損を前提としていない。政府も東電も早期収束に躍起で、作業員にプレッシャーがかかる。被ばくして命を削るのと引き換えに早期収束させるのはもってのほかだ」と指摘する。
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