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シュラウドからの手紙

12月 6th, 2012 | Posted by nanohana in 2 STOP 原発

原発事故は想定外ではない。

チェルノブイリでの惨事から教訓を得ていれば、我々は福島で起きてしまった人類史上最悪の原子力災害を未然に防ぐこともできたかもしれない。

以下に転載する「シュラウドからの手紙」は、詩人の鈴木 比佐雄 (すずき ひさお)氏の2003年の作品である。
この小さき声に耳を傾けなかった、人類の愚かさを悔やむ。

 

 

シュラウドからの手紙

父と母が生まれた福島の海辺に

いまも荒波は押し寄せているだろう

波は少年の私を海底の砂に巻き込み

塩水を呑ませ浜まで打ち上げていった

波はいま原発の温排水を冷まし続けているのか

人を狂気に馴らすものは何がきっかけだろうか

検査データを改ざんした日

その人は胸に痛みを覚えたはずだ

その人は嘘のために胸が張り裂けそうになって

シュラウド(炉心隔壁)のように熱疲労で

眠れなくなったかも知れない

 

二〇〇〇年七月

その人はシュラウドのひび割れが

もっと広がり張り裂けるのを恐怖した

東京電力が十年にわたって

ひび割れを改ざんしていたことを内部告発した

二年後の二〇〇二年八月 告発は事実と認められた

 

私はその人の胸の格闘を聞いてみたい

その良心的で英雄的な告発をたたえたい

そのような告発の風土が育たなければ

東北がチェルノブイリのように破壊される日が必ず来る

福島第一原発 六基

福島第二原発 四基

新潟柏崎刈羽原発 三基

十三基の中のひび割れた未修理の五基を

原子力・安全保安院と東京電力はいまだ運転を続けている

残り八基もどう考えてもあやしい

 

国家と電力会社は決して真実を語らない

組織は技術力のひび割れを隠し続ける

福島と新潟の海辺の民に

シュラウドからの手紙は今度いつ届くのだろうか

次の手紙ではシュラウドのひび割れが

老朽化した原発全体のひび割れになっていることを告げるか

 

子供のころ遊んだ福島の海辺にはまだ原発はなかった

あと何千年たったらそのころの海辺に戻れるのだろうか

未来の海辺には脱原発の記念碑にその人の名が刻まれ

その周りで子供たちが波とたわむれているだろうか

 

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