福井新聞 2012.1.28
2月20日に定期検査入りを予定する高浜原発3号機(左)。運転停止すると、県内の商業炉13基全てが停止する前例のない事態となる=2011年3月、福井県高浜町田ノ浦(本社ヘリから撮影)
中国電力島根原発2号機が27日、定期検査のため運転停止し、国内で稼働中の商業炉は残り3基となった。次に定検入りするのは関西電力高浜原発3号機で2月20日の予定。福井県内の商業炉全13基が止まるという前例のない事態を迎える。再稼働が見通せない状況に対し、電力需給が厳しい関電、産業や雇用が密接にからむ立地地域は強い危機感を抱いている。(伊豆倉知)
国内で現在稼働中の原発は高浜3号機のほか、北海道電力泊3号機(北海道)と東京電力柏崎刈羽6号機(新潟県)。4月下旬には全54基がストップする。
停止中の県内原発は、既に実質的な定検作業を終えているプラントも多い。メンテナンス業務などを受注する協力会社にとっては仕事のない状態で「次年度の定検がなくなれば、経営的に半年ももたない」「定検がなく仕事がなくなれば、会社の解散を検討する必要がある」といった悲鳴が上がっている。
企業体力が十分でない地元業者が万一倒産したり社員の解雇に踏み切れば、技術力が喪失するとの見方もある。高浜町の野瀬豊町長は「遅ればせながらやっぱり原発を動かさないといけないとなったとき、熟練の技術者がいないということもあり得る」と説明。国は再稼働をめぐる政策判断を先延ばしすべきでないと訴える。
再稼働の条件となるストレステストをめぐり国は、大飯3、4号機の1次評価を「妥当」とし、審査は最終段階に近づいているが、県などは新たな安全基準の明示を求めており、国がどう応えるかは見えていない。
関電は2月の最大需要を2665万キロワットと見込み、需給ギャップはマイナス6%台とぎりぎり。「寒さが本格化すれば電力需給は厳しくなる」と警戒する。停止が長期化すれば火力の燃料費がかさみ、経営への影響も大きい。
一方、野瀬町長は「エネルギー政策は刹那(せつな)の感情で決められるものではないという声が少しずつ聞かれるようになってきた」と指摘。全原発の停止によりエネルギー政策の真剣な議論になるよう望みを託している。
この記事は 福井新聞
You can follow any responses to this entry through the You can leave a response, or trackback.