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原発事故で注目 甲状腺がん 進行ゆっくり 症状はしこり

1月 27th, 2012 | Posted by nanohana in 1 体への影響と防御

東京新聞 2011.4.26

 福島第一原発の事故に世界の関心と懸念が集まる中、心配されているのが、放射線被ばくによる将来の甲状腺がん発生のリスクだ。そもそも、甲状腺がんってどんな病気だろうか。正しく理解して、対応したい。 (野村由美子)

 甲状腺は、チョウが羽を広げたような形の内分泌臓器で、成長や代謝に関わる甲状腺ホルモンを作る働きを持つ。のど仏、輪状軟骨の下にあり、気管を前面から囲むように存在する。

 甲状腺ホルモンの“材料”はヨード(ヨウ素)のため、甲状腺はヨードを積極的に取り込む性質がある。今回の原発事故では、放射性物質のヨウ素131などが大量に放出され、吸った場合、内部被ばくする恐れがある。

 甲状腺がんの多くは、のど仏の近くに、しこりを感じる以外の症状はない。検診などで塊が見つかることもあるが、ほとんど良性だ。十年、二十年かかって成長するため、気付かないまま別の病気で亡くなる人も少なくないという。

 「ごく一部を除けば、進行がとてもゆっくりでおとなしいがんです」と、甲状腺専門医の中村浩淑(ひろとし)・浜松医科大第二内科教授(内分泌代謝学)は話す。

 治療は手術が基本。ほとんどの場合、最初にきちんと患部を取り去ることで治る。がんのある側の甲状腺を取り去る場合と、全摘する場合がある。

 全摘後や甲状腺の機能が低下した場合は、甲状腺の機能を補うために、ホルモン薬を一日一回飲む。副作用はない。周辺のリンパ節に転移しても予後はいい。万一、肺などに転移した場合でも、進行は非常にゆっくりだ。

 国立がん研究センターがん対策情報センターによると、人口十万人当たりの患者数(二〇〇五年)は、男性三・四人、女性一〇・八人。同じく死亡者数(〇九年)は、男性〇・八人、女性一・七人。主ながんに比べると、かなり低い。

     ◇

 甲状腺がんの発生原因は、女性に多い理由も含めてよく分かっていない。甲状腺がん患者が最近、世界的に増加している、とするデータがあり、コンピューター断層撮影(CT)やPET検査など医療被ばくが関係しているのではないかという説もあるが、異論も多い。

 旧ソ連のチェルノブイリ原発事故(一九八六年)の際、五歳未満で被ばくした子どもだけ甲状腺がんが増えた、とのデータが報告された。高濃度に汚染された牛乳を飲み続けたのが原因と考えられている。

 子どもは、大人よりはるかに甲状腺の放射線に対する感受性が高い。中村教授は「浴びなくてもいい放射線は、できる限り避けた方がいい。特に十歳以下は気をつけて」と注意を促す。

 また、急性被ばくと慢性被ばく、外部被ばくと内部被ばくを分けて考える必要性を指摘した上で「原発周辺で作業している人の被ばくは、きちんと対処しなくてはいけないが、現時点で、ほかの大人が、甲状腺がんの危険を心配する必要はないでしょう」と話している。

 【甲状腺の他の病気】

 甲状腺ホルモンは、全身に作用し、子どもの発育や大人のエネルギー産生・代謝に関わる。

 ホルモンが多くなる病気(甲状腺機能亢進(こうしん)症)の代表は、バセドー病。甲状腺が腫れ、眼球が突出するなどの症状のほか、いつも全力疾走しているような状態になるため、汗をよくかき、動悸(どうき)がして、体重も減っていく。

 ホルモンが少なくなる病気(甲状腺機能低下症)の代表は、橋本病。同じく甲状腺が腫れ、疲れやすい、冷える、無気力などの症状がある。

 これらの甲状腺機能障害は、放射線とは無関係だ。

 バセドー病は、抗甲状腺薬の服用、橋本病は甲状腺ホルモン薬で治療する。橋本病の六割はホルモン値が正常で、治療の必要はない。

 中村教授は「専門医でなく、内科や婦人科などを受診して、甲状腺の病気が見過ごされていることも多い。患者さんも医師も、甲状腺に関心を持ってもらうことが大切」と話す。

この記事は 東京新聞

 

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