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【食品のセシウム新基準】「農家やめるしか…」 一律厳格化に怒り 県、検査態勢を不安視 福島で説明会

1月 25th, 2012 | Posted by nanohana in 1 汚染の拡散

福島民報 2012.1.25

福島市で開かれた放射性物質対策に関する説明会。出席者から国の担当者に新基準値への疑問の声が寄せられた

「厳しくされたら農家をやめるしかない」。食品中の放射性セシウムの新基準値について、厚生労働省と内閣府食品安全委員会による説明会が24日、 福島市で開かれ、出席した県内の農家らから怒りの声が相次いだ。東京以外で初めて開催されたが、国の方針に納得しない生産者の姿が目立った。一方、消費者 は基準の一層の厳格化を求めている。県は放射性物質検査態勢の確立に不安を抱える。

■見直し求める

「毎日食べるわけではない、あんぽ柿やブルーベリーなどの嗜好(しこう)品まで100ベクレルとすべきではない」。説明会で二本松市の農家男性 は、国が農家の窮状を反映せず基準値を厳しくしたことに憤り、見直しを求めた。「一律の厳格化により農家は生産できなくなり、特産品が消えてしまう」と訴 えた。
説明会には農家や行政関係者ら約160人が出席した。販売先から農産物の安全性について質問され続けているJAの男性職員は、厳格化と合わせて県内農産 物の安全、安心を宣言するよう求めた。しかし、国の担当者からの明確な回答はなく、「質問に全く答えていない。厳格化だけで、消費者に食べてもらえると考 えているのか」と憤った。
県内農家には厳格化されることへの不安や動揺が広がっている。郡山市の農業男性は昨年、約20ヘクタールの水田で作ったコメに放射性物質は検出されな かった。しかし、今年産が昨年と同じ結果になるとは限らない。「消費者に安心してもらうために厳格化は必要。ただ、わずかに検出されただけで周囲の農家ご と風評被害にさらされては安心してコメ作りができない」と嘆いた。

■安心できる

農作物から放射性物質がほとんど検出されていない会津地方。基準が厳格化されても影響は少ないと考える農家は多い。会津坂下町でコメやソバ、リン ゴを生産する農業加藤健さん(63)は「基準が厳しい方が安心して出荷できる。消費者にとってもいいことだ」と受け止めている。
昨年は風評被害の影響が大きかっただけに「基準が厳しくなれば、風評被害の払拭(ふっしょく)にもつながるのでは」と期待を込めている。
ただ、基準値を引き下げても消費者が安心感を持たなければ本県農業の厳しい状態は打開できない。JA福島中央会の長島俊一常務理事は「国は新基準値が国 民の信頼、理解を得られるよう、十分な説明や情報開示をしてほしい。そうでなければ農家は数値に振り回されるだけだ」と強調した。

■こなせない

基準値が下げられることにより、放射性物質検査を担う県や市町村には、現在の態勢で対応できなくなる恐れが出ている。
基準値が下がることは検出下限値の設定にも連動し、従来以上に精度の高さが求められることになる。県は現行の基準値が1キロ当たり200ベクレルの飲料 水の検出下限値を4~5ベクレルに設定しているが、新基準値10ベクレルでは1ベクレルまで下げる考えだ。この場合、検査時間は現在の15分程度から 20~30分に伸びる見通しだという。
県担当者は「人員配置や検査スケジュールを見直すか、検査機器を増やしたりしなければならなくなる」とみる。県は国に検査機器の拡充を要望することも検討している。

【背景】 厚生労働省は東京電力福島第一原発事故後の昨年3月17日、現行の放射性セシウムの暫定基準値を設定した。昨年12月、4月1日から施行する新基準値を まとめた。新基準値は【右表】の通り。基準値の算定根拠となる年間の被ばく限度線量を、現行の「年5ミリシーベルト」から「年1ミリシーベルト」に引き下 げた。新基準値への移行で市場に混乱が起きるのを防ぐため、コメと牛肉は9月30日まで、大豆は12月31日まで経過措置期間を設けている。

 

消費者「安心できない」 「影響出ないのか」 親から疑問

■信じられない

「震災前の状態にならなければ安心できない」。南相馬市原町区の会社役員の男性(38)は食品中の放射性セシウムの新基準値に納得していない。
自宅は東京電力福島第一原発から半径30キロ圏内にあり、原発事故後、妻と1歳の長男を仙台市に避難させている。子どもの放射線による健康への影響を心配し、食生活に注意を払っている。特に水は水道水を使わず、ミネラルウオーターしか与えていないという。
避難指示など後手後手に回る政府の対応を見て、新たな基準値を信じる気になれず、一層の厳格化を求めた。「10年、20年後に本当に影響が出ないと言い切れるのか」
厚生労働省と内閣府の食品安全委員会が本県での開催に先行して今月16日に東京都で開いた説明会でも、子どもを持つ親や食品流通関係者らから新基準値について疑問の声が上がった。「被ばく量をできるだけゼロに近づけてほしい」など厳しい意見が相次いだ。

■成り立たない

基準値の厳格化を求める消費者らの声に対し、厚生労働省は「厳しくし過ぎると、福島県内の農業や漁業、食品生産業などが成り立たなくなる恐れがある」(基準審査課)との見方を示す。
担当者は「基準値はできるだけ下げるというのが基本」と話す。その上で、農林水産省などと協議し、農業などに大きな影響が出ない範囲で新基準を定めたと説明する。
また、食品の国際規格を定める国際機関のコーデックス委員会が定める食品基準にも沿った。「これ以上、基準値を下げると、外国から批判を受ける可能性もある」と指摘した。
今後は健康への影響などの科学的データを示し、引き続き消費者の理解を得るために全力を尽くすという。

この記事は 福島民報

 

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