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徹底除染か、集団移住か【警戒区域・大熊町の場合】

1月 16th, 2012 | Posted by nanohana in 1 福島を救え | 1 避難 | 1 除染 | 3 政府の方針と対応 | 3 首長、自治体

日刊SPA 2012.1.16

【高汚染地域で本格的な除染が始動】

福島第一原発事故の「警戒区域」に指定されている大熊町で、昨年12月8日に除染モデル事業が始まった。効果的な除染方法や作業員の安全対策確立が狙い だ。「警戒区域」や「計画的避難区域」の指定を受けた計12市町村でも順次実施予定。国は’12年から本格作業に乗り出す。以前から細野原発担当相は除染 について「コスト、経済性を度外視して取り組む」と語っていた。

◆高線量地域は「徹底除染」よりも「集団移住」優先で生活再建を

福島第一原発事故から10か月以上が過ぎた。放射能の高汚染地域でも、政府の言うように徹底除染すれば、住民たちは帰郷して元の暮らしを取り戻すことがで きるのだろうか? そんななか、着の身着のままで故郷を追われ仮設住宅での生活を強いられている住民たちのなかから、政府の方針に敢然と異論を唱える地元 議員が現れたという。筆者はこの人物に会うため、会津若松市郊外の仮設住宅に向かった。

高台にある仮設住宅は、どんよりとした雲のもと寒風にさらされていた。取材に応じてくれたのは、前大熊町議で昨年11月の町長選に急遽立候補した木幡仁さん(60歳)。


木幡さんは「町長選ではかなり手応えを感じた」と語る


「現 町長は原発事故という非常事態が起きたのに、町民たち一人ひとりと膝を割って触れ合おうという姿勢が見られなかった。しかも、東電ベッタリの姿勢は今でも 変わらない。町の出張庁舎内にスペースを確保し、東電職員2、3人を今も無償で常駐させているんです。ほかにそんな町村はありません」

大熊町は言わずと知れた福島第一原発の城下町。原発マネーで潤っていた人口約1万1500人のこの町の状況を、レベル7の原発事故が一変させた。放射性物 質がまき散らされた町内では、プルトニウム239、240も検出されている。9月、町が町内167か所を独自に調査して作った放射線量マップによると、原 発から西3km地点でなんと103.66μSv/hの最高値を記録、大半の地点で10μSv/h超、13か所で50μSv/h超を計測した。

「それにもかかわらず、現町長は9月定例会の最終日(10月5日)に『5、6号機が無傷で残っている』と答弁し、脱原発へ否定的な姿勢を表明したんです。このとき、議員辞職をして町長選に出馬することを決意しました」

選挙期間中、会津若松市内から約135km離れたいわき市内の仮設住宅計15か所を何度も回った。木幡さんは除染後の「帰還」を主張する現職とは対照的に、東電との関係見直しと「集団移住」の早期実現などを訴えた。

「現実問題として、放射線量が高くて故郷には当分戻れないと思う。原発から7.5km離れた自宅周辺の空間線量が12.3μSv/h、屋内でも 4~5μSv/h。木造の自宅は地震でも大丈夫だったんですが……。駅前商店街があり400~500人が生活していた下野上地区は20.2μSv/h。見 通しの立たない除染作業を待ちながら仮設暮らしを続けるよりも、集団移住して、そこを拠点に新たな生活に踏み出したい。個人的に移住したくても、住居、仕 事の面や経済的な問題などでどうしてもできない人は多い。それに、住民がバラバラに移住してしまえば地域コミュニティが崩壊してしまう。政策として、希望 する人はすべて集団移住できるようにしなければ」というのが木幡さんの主張だ。

帰還か移住か、世代によって意識はかなり違う。福島大学災害復興研究所が11月上旬に発表した双葉郡8町村の全世帯を対象に行ったアンケートの結果(約1 万3460世帯が回答)によると、34歳以下では52.3%が「以前の居住地に戻らない」と回答。年齢が上がるにつれて帰還希望者が多くなる。戻らない理 由(複数回答)としては「除染が困難」が83.1%と最も多く、次いで「国の安全レベルが低い」「原発事故の収束が期待できない」だった。「子供への放射 線の影響を心配する声が若い世代では特に目立った」という。

福島大学災害復興研究所が昨年11月上旬に発表した双葉郡8町村の全世帯を対象に行ったアンケートの結果(約1万3460世帯が回答)によると、 34歳以下では52.3%が「以前の居住地に戻らない」と回答。年齢が上がるにつれて帰還希望者が多くなる。戻らない理由(複数回答)としては「除染が困 難」が83.1%と最も多く、次いで「国の安全レベルが低い」「原発事故の収束が期待できない」だった。「子供への放射線の影響を心配する声が若い世代で は特に目立った」という

◆「戻れる」前提でいては新たな生活を始められない


木幡さん特製の放射線量の年間換算早見表(手前)と、大熊町内の最新放射線量がひと目でわかる液晶タブレット。町が希望者に配った

この実態を反映するように、11月20日の大熊町長選で「集団移住」を主張した木幡仁さん(60歳)は敗れたものの、4割の支持票を獲得した。

「『2~3年は仮設で我慢するが、それ以上はもう待てない』という声や、健康への不安を訴える声をいくつも聞きました。会津は大熊町のある浜通りと比べて 気温が5度前後低いし、住民の気質も違う。気候風土が似ていて、通い慣れた病院のあるいわき市に流出する住民も後を絶たない」

木幡さんが移住候補地に挙げたのが、大熊町民との繋がりがある、いわき市と田村市の低線量地域だ。

「大熊町の除染には天文学的なお金がかかる。インフラを含め、再建に何十年かかるかわかりません。仮に戻れたとしても、そのときに若い人たちがいなければ 元の町には戻れない。ならば『もう戻れない』ということを前提として、政府に補償を求めて集団移住するのが、現実的対応だと思います」

ここにきて国の動きも加速している。12月12日、細野豪志原発事故担当相が原発事故による汚染廃棄物の中間処理施設を「双葉郡にお願いする方向になると 思う。年内にも方針を決めたい」と双葉郡の自治体関係者に伝えた。新たに設けられる、被曝線量50mSv/年以上の「長期居住困難区域」に建設する考えと みられる。この区域には、大熊、双葉、浪江、葛尾の各町村の一部地域が該当する。

10月下旬、大熊町民有志で発足した「大熊町の明日を考える女性の会」のメンバー11人が都内で細野大臣と面会。中間処理施設の町内設置を要望し、「その かわり定住の環境、土地、家や農業の土地を政府で示してほしい」と、集団移住できる環境の整備を求めた。これまで世界各地の放射能汚染地を取材、写真家の森住卓氏はこう語る。

「福島原発周辺の除染は、都会の場合とは違う。森林を皆伐して全ての表土を剝ぐというのも無理な話だし、その廃棄物を処理する場所もない。莫大な税金を投 入して山野を引っかき回すだけ。先の見えない、果てしない作業が続くことになります。住民は『戻れる』という前提でいるため、新たな生活に踏み出すことが できない。もう『当分、人が住めなくなってしまった地域がある』ということを認めるしかな い。そのうえで、移住希望者が新たな生活を始めるための支援策を整備するべきだと 思います。私自身、この地域の自然の豊かさや人の繋がりの温かさに惚れ込んでいただけに、本当に残念なことですが」

原発事故による国土の汚染はこれほどにも深刻なのだ。

取材・文/北村土龍 撮影/田中裕司

この記事は 日刊SPA

 

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One Response

  • SAVE CHILD管理人 says:

    こんばんは。
    先ほどはツイートしていただき、本当にありがとうございます。
    ツイッターでDMしましたので、ご確認お願いします。



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