原発近くの古墳壁画ピンチ 床に木の根、放射能汚染で立ち入り困難
1月 16th, 2012 | Posted by in 1 放射能汚染産経新聞 2012.1.15
渦巻き文様を中心に、冠をかぶる人物や馬(右)などが描かれた壁画=双葉町教委提供
冠をかぶる人物などが描かれた壁画古墳で、福島第1原発から3・5キロしか離れていない福島県双葉町の国史跡、清戸迫(きよとさく)横穴(よこあな)で、草木の根が壁画近くまで伸びながら、原則立ち入りが禁じられた半径20キロ圏内の警戒区域のため、手つかずとなっていることが分かった。町教委が昨年9月末に状況を確認。町教委は17日、除去作業に入る予定だが、被曝(ひばく)を避けるため時間は数十分に限られ、迅速な作業が求められそうだ。
同古墳は7世紀の築造で、岩盤をくり抜いた埋葬空間(長さ、高さ各2・6メートル)の奥壁に渦巻き文様や馬に乗る人物などが朱色で描かれ、良好な状態で残っている。入り口に保護施設を設けて外部と遮断し、壁画を保護してきた。
しかし、東日本大震災による原発事故で、住民や町職員らが町外へ避難。昨年9月末、町職員が許可を得て調査したところ、保護施設や壁画の損傷はなかったが、床面に長さ1メートル以上の根が伸びているのを確認した。根は壁画まで1メートルに迫り、さらに伸びれば壁画に付着しそうな状況だった。
調査時の放射線量は、屋外で2・47マイクロシーベルト、横穴内は10分の1程度だった。この日の双葉町内での作業時間は計3時間程度だったが、他の文化財の状況確認も必要だったため、根の除去には至らなかった。
町教委は12月8日に再び現地に行ったが、保護施設の扉の鍵の不具合で中に入れなかったため、改めて許可を得て、今月17日に除去作業に入ることになった。担当者は「2~3月は雪が多くなり、その前に根を除去して対策を考えないといけない」と話す。
他の古墳壁画では「飛鳥美人」の描かれた高松塚古墳(奈良県明日香村)やキトラ古墳(同村)で根が付着し、除去できなくなっている。清戸迫横穴で根が壁画に付着すれば、警戒区域内で頻繁に立ち入れないため、より深刻な問題になる。文化庁美術学芸課は「壁画はただちに劣化する状況ではないが、処置も容易にできない」とし、対応に苦慮している。
この記事は 産経新聞
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