愛媛新聞 社説 2012.1.15
伊方原発、全基停止―「3・11前」には想像もできなかった日が、やってきた。
四国電力は13日深夜、伊方原発(伊方町)3基のうち唯一稼働中だった2号機の送電を止め、定期検査に入った。
3基同時停止は初めて。全国の商業用原発54基のうち、残る稼働中は5基となり、すべてが4月中にも停止する見込み。日本中の原発が沈黙する日が刻一刻と迫っている。
半世紀にわたって強力に推進されてきた国策の原発事業の、一大転換点である。
東京電力福島第1原発事故で、「これまでの安全」への信頼は無残に裏切られた。
古里という過去も、被災者の現在も、子どもの未来も奪われ、真の収束まで何十年、何百年かかるか分からない。そんな事態を引き起こした全容の解明はもちろん、「次」を確実に防げる手だても判然としないまま、応急の安全策や「再稼働条件づくり」に追われ、それでも全国で原発が動き続けていたことが、思えば恐ろしく、不思議だった。
さまざまな社会的影響の大きさを鑑みても、ここはいったん立ち止まり、一人一人が暮らしを、未来を、真摯(しんし)に見つめ直す契機とせねばならない。そして、もはや押しとどめようのない「脱原発」の流れを加速し、一歩を踏み出す英知と決断を求めたい。
四電側は、早期の再稼働を目指す姿勢を崩していない。しかし、ストレステスト(耐性評価)の審査終了など事務的な要件が整ったとしても、また新しい安全基準が設けられ、四電はじめ電力会社がそれをクリアしたとしても、それだけで立地県として、県民として、再稼働を容認できるわけではもちろんない。
新たに見直された運転「40年規制」に照らせば、1977年運転開始の伊方1号機をはじめ、四国の原発は早晩、廃炉を視野に入れた計画の再構築を迫られるだろう。延命や再稼働の模索より前に、あるいは並行して具体的な進路を示さなければ、県民の理解と納得は到底得られない。
まして、電力不足を盾に、再稼働ありきの結論を導くことはあってはならない。
四電は「綱渡り」を強調するが、昨夏の「節電の夏」、そして現にこの冬も、火力発電所の運転再開などの対策もあって乗り切れそうな情勢。今後もし、本当に不足が見込まれるのなら、そのときは企業や住民が、より自覚的に節電に取り組む番である。
目先の利便性、経済性を優先し、不安を抱えながら原発に依存する社会は本当に正しいのか。私たちはそんな社会を本当に望んでいるのか―。「原発のない社会」が期せずして実現する今こそ、ただ国の判断を待つのでなく、主体的に判断し、自ら未来を選び取る覚悟が問われている。
この記事は 愛媛新聞
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