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東京電力、「債務の株式化」を検討 再建に向けた“神経戦”は大詰め

1月 10th, 2012 | Posted by nanohana in 3 今後の電力・原子力政策・行政 | 3 利権・推進派・御用学者 | 3 政府の方針と対応 | 3 東電 電力会社 原子力産業

ダイヤモンドオンライン

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【第66回】 2012年1月10日 週刊ダイヤモンド編集部

東京電力の中長期の再建策を示す「総合特別事業計画」で、「一時的な公的管理」が検討されて いる。3月末までに策定される予定で、東電、政府、金融機関などの思惑が交錯した“神経戦”は大詰め段階に入った。政府は国民の納得感を模索するなかで、 「債務の株式化」などを検討している。

「東京電力はまだまだ陥落していない。勝俣恒久会長をはじめ、首脳らが経営の自主性に対し、強力な執着心を示したメッセージを放ったものだ」と関係者は語る。メッセージとは、電気料金値上げ方針のことだ。

昨年12月27日、枝野経産相は東電の西澤社長との会談で、総合特別事業計画に向けて「一時的な公的管理も含めて検討してほしい」と要請した。写真は会談後に経産省で取材に応じる西澤社長
Photo:JIJI


昨年12月22日、「東電の国有化」に関する報道が相次ぐなか、政府の認可が不要で全体の6割を占める大口企業向け電気料金を今年4月以降に引き 上げると発表した。この発表は当日朝の一部新聞の値上げ報道を受けて、急きょ午前11時から実施になった、ということになっている。枝野幸男経済産業相、 原子力損害賠償支援機構の関係者をはじめ、政府関係者に連絡が回ったのは、当日の午前6時以降で「寝耳に水」だった。

しかし、「西澤俊夫社長が会見し、手際がよ過ぎるという印象を受けた。まるで機会をうかがっていたかのようだ」(政府関係者)。事前に漏れて値上げ発表に政府等から横やりが入らないように、機先を制したという動きなのだ。

さらに東電は、政府の認可が必要な家庭向け電気料金についても値上げの方針を示し、西澤社長は「申請は事業者としての義務と権利である」と発言した。

東電、政府、金融機関で
展開される激しい鞘当て

東電は機構とともに3月末までに、中長期の経営再建策となる「総合特別事業計画」をまとめる予定だ。この策定をめぐって、東電、政府(機構)、金融機関などのあいだで激しい鞘当てが繰り広げられている。

東電の値上げ方針発表に対して、政府はすぐに反応した。

枝野経産相は12月27日夜、西澤社長との会談で、総合特別事業計画に向けて「一時的な公的管理を含め、あらゆる可能性を排除しないこと、値上げ は電力事業者の権利であるという考えは持たないようにすること、新生東電の姿をわかりやすく盛り込むこと」と、三つの条件を挙げて釘を刺した。「枝野大臣 は西澤社長が『値上げは権利』と発言したことに対し、強い不快感を持っていたようだ」(与党関係者)。

政府としては税金を使い、機構を通して損害賠償の一時肩代わり(東電破綻となれば一時ではなくなる)をしている以上、国民が納得するかたちで、東 電に徹底的なリストラを要求し経営責任を追及するほか、株主や金融機関などのステークホルダーにもなんらかの責任を果たさせなければいけない。

これに対して東電は、政府や金融機関からの資金援助や追加融資は望んでも、経営の自主性は失いたくないという姿勢だ。

一方、金融機関は責任を回避したい。東電から要請されている継続や追加の融資も、東電の収益力が回復しなければ、返済が危うくなってしまう。金融 機関としては、東電が持続的な収益体に戻ること、そのための値上げ、原発の再稼働、政府の出資が、融資の継続や追加の最低条件だ。昨年末から国有化報道が 流れるのは「それを既成事実化して、国による救済で終わらせたい銀行からのリーク」(政府関係者)という見方が強い。

ましてや、一時期、枝野氏が官房長官や経産相として発言していた債権放棄は、「債務超過にも法的整理の対象にもなっていない企業に実施するのは銀行の経営上説明がつかず、株主代表訴訟のリスクがある」(大手都市銀行首脳)と拒絶反応を示す。

まさに、それぞれの立場から情報が発信され、神経戦の様相を呈している状態だ。

しかし、現実を直視すれば、東電や金融機関の抵抗は無理がある。

東電の再建における課題は大きく三つある。原子力発電所の停止に伴う火力発電所の燃料費の増加、社債の償還への対応、そして巨額の廃炉費用だ。

2011年度の燃料費は昨今の原油高(LNGも原油価格に連動)に加え、現在運転中の柏崎刈羽原発5号機、6号機が定期検査に入ることもあり、前年度より約8300億円増となる見通しで、営業利益が大幅に減少する。

社債発行残高で、東電は約4.5兆円と国内最大の企業。12年度で約7500億円、13年度で約5900億円の償還期限を迎える。

廃炉費用では、政府の「東京電力に関する経営・財務調査委員会」は、福島第1原発の1~4号機分だけで1兆1510億円と試算。すでに約8000 億円を引き当てたが、いまだ3000億円強が残る。実際の作業状況や残り5~6号機を含めれば、それ以上に廃炉費用がふくらむ可能性も高い。

その一方で、東電の純資産は、11年9月末が9635億円。東日本大震災前の10年3月末に比べ、1兆5529億円も減少した。

原発は1基当たり約1000億円の電力収入を生むとされる。「仮に、新潟の柏崎刈羽の原発7基が今年度中から稼働し、企業向けと家庭向けの電気料金をそれぞれ2割値上げすれば、公的管理は避けられる」(関係者)。

とはいえ、その実現性は少ない。今年、新潟県は知事選を控えており、原発再稼働は認めない可能性が高い。政府の認可を必要とする家庭向け電気料金の値上げも、政治的にハードルが高いからだ。

現状のままでは、東電の債務超過は時間の問題。債務超過となれば金融機関の継続および追加融資は困難となり、東京証券取引所の規定では翌年2部転 落、債務超過が翌年も続けば上場廃止となる。社債の償還も不可能となり、経営破綻に向かうことになろう。つまり、それを避けるために、「公的資金の資本注 入は必然」状態。政府は、機構の規定にある「電力の安定供給に資する」という目的に照らして、破綻を未然に防ぐための資本注入をする見通しだ。

資本注入は東電の申し入れで

手続きは、東電が機構に資本注入を申し入れ、それを機構(政府)が認可して行われる。つまり、東電が事実上自主経営を断念することが前提で、年末の鞘当てはそれに向けた、国民を前にしてのパフォーマンスなのかもしれない。

そして、資本注入の場合、税金がさらに使われることになるため、金融機関にも、「協力が求められる」(政府関係者)ことになる。経営破綻となれば当然起こりうる債権放棄が回避されるからだ。

融資先の破綻前の“協力”で、有力な落としどころとして検討されているのが、「DES(デット・エクイティ・スワップ)」だ。銀行の債権(デット)を、資本(エクイティ)に換えるというものだ。

金融機関が債権の一部を放棄し、一部をDESするという方法を取るケースが多いが、今回のように債権放棄が難しい場合、DESだけを行うこともある。

東電にとっては、負債が資本に換わって債務超過を回避できるうえに、金利負担も軽減される。同時に、株主権利の希薄化や株価下落で、既存株主はさらに責任を果たすことになる。

ただし、単純なDESでは、債権の時価評価次第で新たな課税問題等が発生する可能性があるため、機構や金融機関による資本注入や融資を先行し、そ れによって得た資金で既存の借金を返済する擬似DESという方式を取る可能性もある。金融機関がDESによって得る株式は優先株など議決権のない株式で引 き受け、「金融機関の5%ルール」に抵触しないかたちになるだろう。機構からの出資では、一定の議決権を持つ必要性から、優先株だけでなく、普通株を交え ることが検討されている。

東電の経営陣は、資本注入を受けた場合、退陣という経営責任を求められることは必至だろう。

いずれにせよ東電の経営再建は、世論の合意を得る方法であることが大前提だ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 山本猛嗣)

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