2012.1.10
電力会社の大株主である東京都と大阪市で、原子力発電所の賛否を問う住民投票条例の制定を目指す市民団体「みんなで決めよう『原発』国民投票」が、昨年12月10日に署名集めを始めてから9日で1カ月。大阪では法定期間の1カ月で、首長への直接請求に必要な有権者の50分の1(約4万3000人)を超える約5万人分が集まった。東京は期間が2カ月で、8日現在有権者の50分の1(約21万4200人)の3分の1ほどの約7万8000人分にとどまっている。
東京では、選管による審査で無効分が出ることを考慮して30万人分を目標に掲げ、俳優の山本太郎さんらが都内の主要駅で署名を呼びかけてきた。期限の2月9日まで(期間内に首長選で署名活動ができない一部自治体は除く)にあと13万人超分の署名を集める必要がある。
団体が求めようとしている住民投票条例案は「有効投票総数の過半数の結果が、投票資格者総数の4分の1以上に達したとき」は、知事や議会に対し、東電や国などと協議して、東電管内の原発の稼働について「都民の意思が反映されるよう努めなければならない」としている。【武内亮】
◇苦戦の背景「収束宣言」?
「当初はもっと反響があるとみていた。原発問題は今後の日本を考える上での重要なテーマ。何とか条例制定を」。市民団体「みんなで決めよう『原発』国民投票」は、東京で署名活動の盛り上がりを狙う。
「大切なことを国民が決められるような社会にしましょう」。7日午後、東京・新宿のデパート前で、市民団体のメンバー6人が署名を呼びかけた。長女(3)と訪れ、署名した豊島区の原口明子さん(38)は「原発にもっと多くの人が関心を持っていたら、福島第1原発事故が起きなかったのではないか。自分の意見を伝えたくて署名した」と話す。
東京都は東京電力の大株主である上、東京は電力の大消費地。しかし、この日署名に応じたのは通行人40~50人に1人ほど。30代の男性は「原発の代わりのエネルギーは何か。はっきりしない中で賛否だけを問う条例の制定と言われても……」と署名をしなかった。
市民団体事務局の中村映子さん(57)は、政府の福島第1原発事故の「収束宣言」が、苦戦の背景にあると見る。中村さんは「『原発は大丈夫』という雰囲気が広がり、関心が薄れつつあるのではないか」と指摘する。
団体では約1万2000人が署名集めをしていて、多くは主婦や学生ボランティアだ。32人いる請求代表者の一人、主婦の高田恵理さん(48)=杉並区=は「原発問題にほとんど無関心で、市民活動の経験はなかった。でも事故を機に、何かできることはないかと考えた。一人一人が『本当の豊かさは何か』を考え、その知恵や意見を反映できる仕組みをつくりたい」と言う。【武内亮】
毎日新聞 2012年1月10日 東京朝刊
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