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【現地リポート】 年の瀬の福島は今(下) ~続・開成山公園を封鎖せよ

12月 27th, 2011 | Posted by nanohana in 1 子供たちを守ろう | 1 放射能汚染 | 1 測定 | 1 除染

フリーライター・鈴木博喜 民の声新聞 2011.12.24

弓道の袴姿の女性は、けたたましく鳴り響くガイガーカウンターの警報音と表示された数値に 言葉を失った。思わず口に手を当てていた。「ここは高校生も利用するんです」─。福島原発事故から9カ月経ってもなお、高線量の計測される郡山市のホット スポット・開成山公園。先月に続き、今月も声を大にして言おう。ここは人の立ち入れる場所ではない。即刻、封鎖して立ち入り禁止にするべきだ。近隣の民家 でも同じよう計測器の針が振り切れる個所が相次いだ。毎時10μSVと言えば、単純換算で年80mSVに達するとんでもない高線量。学生たちよ、部活動な んかしている場合じゃない。逃げよう。ここは人の住める場所ではない。除染に限界があることは、大人たちも十分分かったはずだ。ガイガーカウンターの針が 振り切れる町、郡山。裁判所がどれだけ言葉を尽くして否定しても、私は子どもたちの避難を求めていく。

【高校生も利用する弓道場】
きっかけは、ツイッターでの依頼だった。
「すみませんが、開成山弓道場がホットスポットになっていると聞いたことがあります。もし測ってもらえたら、嬉しいです」
弓道場はすぐに見つかった。
玄関のすぐ横に雨どいがある。
ガイガーカウンターを近づけた。すぐさま警報音が鳴り出した。それも、今までに聞いたことのないような鳴り方。「これは相当高いかもしれない」。そう思った直後、数値は9.99μSVを示していた。いわゆる針が振り切れた状態だった。その後、何度も測ったが、結果は変わらなかった。ツイッターでは、この近辺の雨どい直下では、20μSVまで測れる計測器でも振り切れるとの情報が寄せられた。つまり、この雨どい直下では毎時20μSVを超している可能性がある。これが30μSVだったら…年間被曝量は240mSVにまで達する。放置してはならない。
「ここは高校生も利用するんです。先日も、高校生たちが大掃除をしてくれたばかりで…」
弓道場利用者の一人は、袴姿のまま表情を曇らせた。
「郡山市には、早く調べて欲しいと言っているんです。でも、順番があるからと言われて、一向に測ってくれない。この辺りの線量が高いのは分かっていましたが、これほどまでとは…」
結局、利用者の求めで、弓道場内を測ってみたが、的近くの水たまりでは毎時6μSVを計測。他の地点でも軒並み高い値になった。途中から「先生」と呼ばれる男性も加わったが、初めは不審そうにこちらをうかがっていたが、実際の数値を目にするようになって事態の深刻さを理解したようだった。
「今回の結果をすぐ市役所に伝えます。市教委が担当のはずです。詳細な調査をしてもらわないといけませんね。そして、高校生は利用させないようにしないと」
果たして市当局は迅速に動くか。子どもの命がかかっているのだ。


開成山弓道場の雨どい直下で毎時9.99μSV
を計測(上)
雨どいを心配そうにのぞき込む利用者(下)
=福島県郡山市 12/24、16時すぎ


【改修工事という名の大規模除染】
開成山公園ないの陸上競技場は現在、大規模改修工事が進められている。
工事の概要を示す看板には「大規模改修工事」と記されているだけ。市のホームページにも「耐震補強工事等」としか書かれていない。
だが、「あれは4億円かけた大規模な除染活動だ」と革新系市議が打ち明ける。
同市議は、除染活動にも参加した経験から「これ以上、除染活動をしても一時的な線量低減化が図られるにすぎない。だからこそ、被曝の恐れの無い土地に避難させなくてはいけないのだが…。あとどれだけ無駄な除染に予算をつぎ込むのか」と指摘する。
通学路の片側だけ高圧洗浄する除染。低減化も限界にきていることを市民も感じ始めている。だからこそ非難を、とふくしま集団疎開裁判の支援活動もしている。だが、周囲の市会議員の反応は鈍いという。「みんな、ここの線量が高いのは知ってるはずなのに…。線量の話をしているのは議会で私くらいなものです」
大規模改修という名の除染が行われているなか、傍らでは陸上競技部の高校生が部活動に励んでいる。
近くの落ち葉溜りでは毎時4μSV近くの高線量が計測された。
放射線に対する感受性の強い高校生など、ここに立ち入ってはいけないのだ。


3/31までの予定で大規模改修工事が行われている
開成山陸上競技場。看板には一切表示が無いが、
革新系市議によると「大規模な除染作業だ」(上)
近くの落ち葉溜まりでは、毎時3.91μSVを計測した(下)

【元の福島を返して】
弓道場だけでなく、開成山公園から郡山駅に向かう「はやま通り」沿いの雨どい直下では、軒並みガイガーカウンターの針が振り切れた。振り切れなくとも、学習塾前の側溝や、公園周辺の落ち葉溜り、美術館前の植え込みなど、至る所で毎時2~4μSVの高線量を計測した。しかも、福島市と同様、汚染された落ち葉を通常の可燃ごみとして燃やしている。これはもはや、町全体がホットスポットと化しているとは言えないか。
市内の酒店主は言った。
「あの頃、もしかしたらこうなるんじゃないかって想像していた通りになっている。多くの人が除染活動に参加してきたけれど、結局、線量は下がっていない。これから、どうなってしまうんだろう。私が生きている間にきれいな福島は甦るのだろうか。返してほしい。元の福島を返してほしい。本当に、素晴らしい町だったんですよ」
残念ながら、元の福島が戻ってくるには数十年はかかる。
いや、もしかしたら戻らないかもしれない。
だからこそ子どもたちの避難を。
そして、高線量地域の立ち入り禁止を。
行政は早急に取り組むべきなのだ。

(了)

この記事は
フリーライター・鈴木博喜 民の声新聞 2011.12.24

 

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