食品被ばく 安心できる基準なのか 東京新聞 社説
12月 22nd, 2011 | Posted by in 未分類東京新聞 社説 2011.12.22
食品に含まれる放射性セシウムの新しい規制値案を厚生労働省がまとめた。現行の暫定規制値より厳しくしたが、数値の変更はこれまでの基準では安全に問題があったのかと疑問がわく。
暫定規制値は安全ではなかったのか。新しい規制値は、そう思えてしまう厳しい数値だ。
新しい規制値は暫定値に比べ四分の一以下に、特に飲料水は二十分の一にした。乳児用食品も新たに数値を設けた。
規制は厳しい方が安全だ。暫定値は被災後の緊急措置として設ける必要性もあった。疑問なのは、厚労省はこれまでの数値でも問題ないと説明してきたのに、なぜ新たに厳しい規制値を設けるのか。しかも適用が来年四月からでは遅すぎないか。
放射性物質を規制する政府の対応は二転三転してきた。
文部科学省は、小中学校などでの屋外活動を制限する基準に当初は年間二〇ミリシーベルトと決めた。ところが保護者らの批判を受けると、年間一ミリシーベルト以下に変えた。
給食の放射線検査に関しても、厚労省の暫定値とは違う数値を示した。その上、示した数値は自治体が検査機器を選ぶ際に検出できる最低値の目安と説明する文科相と、給食の安全の目安とする副大臣で見解が食い違い混乱した。
まだある。食品安全委員会が出した「生涯に一〇〇ミリシーベルト以上被ばくすると健康に影響がある」との答申だ。当初は食品など内部の被ばくと、雨などで体の表面に放射性物質が付く外部の被ばくを合わせた数値との考え方だった。
だが、食品安全委は食品の安全性を評価する組織との立場から、食品による内部被ばくのみの数値とした。
そもそも放射性物質の規制を各省庁がバラバラに検討している。政府として責任を持って基準を決める専門機関がないことが問題である。検討すべき課題だ。
食品の安全確保に欠かせない検査にも漏れがある。安全宣言をした福島県産米から暫定値超えの放射性物質が出た。さらに新規制値だとこれまで流通していた食品への不安も募る。
政府への不信から、小売りや学校給食の現場で自主検査が広がっている。市民が食品を持ち込んで測定する施設も開設されるなど、流通前の行政の水際検査のさらに水際で自衛しているのが実情だ。
政府は、新しい規制値の丁寧な説明と検査の徹底で市民生活を守る姿勢を示すべきだ。
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