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東電の刑事責任 東電はおとがめなしでは、社会の倫理が崩壊

12月 18th, 2011 | Posted by nanohana in 3 東電 電力会社 原子力産業 | 3 隠蔽・情報操作と圧力 | 4 事故原因

東京新聞 こちら特報部 2011.12.17  より転載

「事故収束」宣言であらためて問う東電の刑事責任

 東京電力福島原発事故で、野田佳彦首相は16日、「事故の収束」を宣言した。現実はほど遠いが、事故への臨戦態勢が解かれたなら、東電への責任追及に本腰を入れるべきだ。
「想定外の津波」を盾に同社は刑事責任を免れようとするが、放射性物質をこれだけまき散らして罪に問われないのは不可思議だ。焼き肉店の食中毒事件で強制捜査が入り、東電はおとがめなしでは、社会の倫理が崩壊しかねない。(上田千秋、佐藤圭)

 「一電気事業者にすぎない東電のために、国は倒産しないよう特別な法律までつくった。刑事責任まで問われないとしたら不自然極まりない」

 ルポライターの明石昇二郎氏はこう語る。明石氏は7月、作家の広瀬隆氏とともに、東電の勝俣恒久会長や原子力安全委員会の班目春樹委員長らに対する業務上過失致死傷容疑の告発状を東京地検特捜部に提出した。

 その後、特捜部からの連絡はないという。明石氏は「東電の責任をきちんと追及できるかどうか、国としてのモラルが問われている」と話す。

 地元の福島県警はどうか。同県警広報室は取材に「個別具体の事件捜査についてはコメントを差し控える」と答えた。

 政府や国会も事故調査委員会を設けた。ただ、これらはあくまでも事故の原因究明が目的だ。

 政府の事故調査・検証委員会の畑村洋太郎委員長は「責任を追及する調査はしない」と明言している。責任追及が前提となると、関係者から証言が得にくく、調査の妨げになるという考えだ。

 国会の事故調査委員会は調査対象でもある政府から独立している分、政府事故調よりも厳しく東電に対応するとみられるが、責任追及の場ではない点に変わりはない。

 原発事故で刑事責任が問われた例では1999年9月の東海村臨界事故と、2004年8月の関西電力美浜原発3号機の蒸気噴出事故がある。

 東海村事故では、JCO東海事業所の従業員2人が大量被ばくで死亡。元所長ら6人が業務上過失致死罪で執行猶予付き有罪、法人としてのJCOが原子炉等規制法違反罪と労働安全衛生法違反罪で罰金刑になった。

 美浜事故では蒸気や高温水を浴びた作業員11人が死傷。現場責任者ら6人が業務上過失致死傷容疑で書類送検され、5人が罰金の略式命令を受けた。遺族の一部からは「トカゲのシッポ切り」という声が上がった。

 原発以外の企業による事件ではどうか。

 薬害エイズ事件では、製薬会社「ミドリ十字」(現・田辺三菱製薬)の歴代3社長のうち、2人は業務上過失致死罪で禁錮の実刑、1人は控訴審の途中で死亡している。

水俣病事件では、原因はチッソの工場排水だとして元社長と元工場長が業務上過失致死罪で執行猶予付き有罪となった。

 最近では、8月の天竜川川下り船転覆事故で、静岡県警が運航会社を業務上過失致死傷容疑などで強制捜査。

焼き肉チェーン店「えびす」の集団食中毒事件でも、富山県警などが運営会社などの立件を目指している。

 東電の経営責任については、政府内からも厳しい声が上がっている。

 同社は6月の株主総会で、清水正孝社長が引責辞任したが、実質的に経営を取り仕切る勝俣会長は留任した。

 だが、事故の損害賠償への政府支援と引き換えに、原子力損害賠償支援機構と共同で来年3月に策定する総合特別事業計画では、勝俣会長を含む経営陣の一新や退職金の放棄、企業年金のカットなどが迫られそうだ。

 刑事責任はどうか。前出のJCOが問われた原子炉等規制法違反。同法は原子炉を扱う際の規則を定めており、適正な原発の運転を欠いたとなれば、今回も適用される可能性がある。しかし、罰則は軽く、JCOでも罰金は100万円だった。

 労働者の安全と健康を確保するよう事業者に求める労働安全衛生法の違反には問われそうだ。

 厚生労働省は6月、東電の社員2人が限度の250ミリシーベルトを超えて被ばくしたとして、同法違反で東電に是正勧告している。ただ、過去のケースでは大半が労働基準監督署から書類送検され、罰金刑で終わっている。

 より厳しい刑事罰が必要だと考えるのは、東電に対する株主代表訴訟の準備を進める河合弘之弁護士だ。同弁護士は「被ばくさせたことで傷害罪に問えるし、原発周辺に立ち入れなくなったことで救出できずに亡くなった人もいたはず。業務上過失致死傷容疑で追及すべきだろう」と語る。

 「すでになされている告発に加え、近く被害者本人による告訴の動きも出てくるだろう」

 この罪には法人を処罰する規定がなく、個人が罪に問われる。今回の場合、立件への最大のハードルは津波や地震によって事故が起きると事前に認識できたかという「予見可能性」だ。過去の航空機や鉄道の事故などでも、この点の立証が難しいとされてきた。

 東電は2008年、福島第一原発が10メートルを超える津波に襲われ、敷地の一部では15・7メートルの高さまで駆け上がる可能性があるとの試算をしている。東電は「無理な仮定による試算だ」として放置したが、対策を取っていれば14~15メートルまで到達した震災の津波を防げた可能性がある。

 河合弁護士は「東電は福島原発で昨年、津波による全電源喪失と放射能漏れを想定した避難訓練までやっている」と明かし、「とても『想定外』と言い逃れられる状況ではない」と断じる。

 事故の主因が地震による損傷となれば、一段と問いやすくなる。東電は「事故原因は想定外の津波」としているが、経済産業省原子力安全・保安院は最近、地震で1号機の原子炉系配管に亀裂が入った可能性を示す解析結果をまとめている。ところが、今回の地震の揺れの大きさは、1号機における耐震設計の基準値内だった。

 東電や政府の会見に出席してきた日隅一雄弁護士は「実際に事故との因果関係を立証する際にはどちらか一つに原因を特定するのだろうが、捜査当局にとっては選択の幅が増えたことになる」と指摘。「起訴するか否かは別にして、証拠を集めるために強制捜査はするべきだろう」と話す。

 ほかに原子炉メーカーを製造物責任法に問うべきだとの意見もあるが、これは過失が判明しても刑事罰は伴わない。

 河合弁護士はこう語気を強めた。「これだけ被害を出して、刑事責任なしは市民感覚からいっておかしい。警察や検察が捜査に乗り出すよう、一人でも多くの被害者が声を上げる必要がある」

 <デスクメモ> 
放射能影響研究所の元理事長らでつくる政府の部会が年20ミリシーベルトの放射線量でも居住可能と答申した。法定基準は年一ミリシーベルトだ。政府が違法を認めてどうする。
同じ日、環境相は東電社員に除染の推進員なる役を委嘱した。汚した当人が掃除するのは当然。なぜ委嘱なのか。正気を保つだけで疲れる国だ。(牧)

 

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