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風知草:元のモクアミを憂う=山田孝男

11月 8th, 2011 | Posted by nanohana in 3 今後の電力・原子力政策・行政 | 3 利権・推進派・御用学者 | 3 官僚 | 3 政府の方針と対応 | 5 オピニオン | 7 政治

2011.11.7 東京朝刊
 あれほどの災害があり、ああまで批判された以上、原子力開発の予算要求が減ると思う人はお人よしである。

 来年(2012年)度原子力関係予算の概算要求を貫くキーワードは「現状維持」だ。根底に流れる精神は「関係者の生活が第一」である。そんな政治でいいはずがない。

 9月末に出そろった概算要求の資料を眺めて気がついた。実績ゼロ、お先真っ暗な高速増殖原型炉「もんじゅ」の関連経費が、今年度(実績)とピッタリ同じ215億円。もんじゅ以上に先が見えない「核融合」の経費が、今年度の2倍の332億円へ伸びている。

 これらを含め、復旧・復興関連を除く原子力関係予算要求総額は、一般会計と特別会計を合わせ、今年度並みの約4400億円になった。

 もんじゅは、原発から出る使用済み核燃料を再利用して発電する「夢の原子炉」だ。福井県敦賀(つるが)市にある。エネルギー自給の切り札として1967年立案。今なお研究段階だから文部科学省の所管である。

 80年代に実用化のはずが、ずるずる延び、最近は「2050年」メドと言っている。実験開始直後の95年、火災で休止。昨年、14年ぶりに動かしたが、事故で休止。つぎ込まれた国費が延べ1兆円。原発震災で見直しかと思いきや、「例年並みでいきましょう」というのが予算要求官庁の感覚だ。

 もんじゅの概算要求を細かく見ると、「研究開発費」を11%カットする一方、出力試験再開と安全対策に備えるために「対応調整費」を新設、合わせて今年度並みとした。

 総額維持に腐心する理由は、はっきりしている。

 もんじゅは核燃料サイクル構想の柱の一つだ。廃炉・撤退なら半世紀の国策の誤りを認めることになり、行政のメンツがたたない。国策と信じて巨額の投資を重ねてきた電力会社が行政訴訟を起こしかねない。立地地域周辺の雇用、経済に大打撃を与えるのみならず、全国の原発に影響を及ぼす--。

 それでもなんでも、政策の徹底的な洗い直しを迫られるほどの原発震災だったはずだが、そうなっていない。

 原子力開発関連の要求で目立って増えたのが核融合だ。思い切った判断かと思ったら、日本も参加している国際熱核融合実験炉の計画で初めから決まっている額だという。

 ウランやプルトニウムの核分裂反応ではなく、水素やヘリウムの核融合反応を用いてエネルギーをつくる。それが核融合だが、これこそ雲をつかむような現状。ノーベル物理学賞・小柴昌俊東大特別栄誉教授(85)の批判を引く。「原発よりエネルギーの高い中性子が出てくる。(炉壁の耐性から見て)とんでもない話だ」(毎日新聞東京本社版7月1日夕刊)

 そういえば、野田3原則というのがあった。「余計なことは言わない」「派手なことをしない」「突出しない」(毎日新聞9月26日朝刊)

 薬が効きすぎたか、政策官庁の主流の官僚に流れを変えようという意欲がない。器量不足の政治主導でヤケドした民主党閣僚は、あてどなき官僚依存へ逃げ込んでいる。

 来年度予算はまだ要求段階であり、年末にかけて財務省がナタをふるうだろう。節約も、改革も、財務省次第。何ごとも財務省頼みという政権の本質がここにも表れている。こんな政治でいいはずがない。(毎週月曜日掲載)

 

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