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相変わらずの過剰節電キャンペーン始まる

10月 16th, 2011 | Posted by nanohana in 2 「電力不足」?・節電 | 3 東電 電力会社 原子力産業 | 3 隠蔽・情報操作と圧力

毎日新聞 2011.10.13

記者の目:関西電力の15%節電要請=横山三加子(大阪経済部)

「くいだおれ太郎」も節電のため、太鼓をたたくのをやめた=大阪市中央区で7月、川平愛撮影

「くいだおれ太郎」も節電のため、太鼓をたたくのをやめた=大阪市中央区で7月、川平愛撮影

◇過剰目標の影響もっと考えて

東京電力福島第1原発事故をきっかけとした「節電の夏」、関西電力の節電要請は独善的だった。節電が当然とする姿勢が目立ち、負担を強いられる企 業や家庭への配慮は感じられなかった。原発事故で一変した電力事情を前に、社会は企業活動や生活と節電の両立に手探りで取り組んだと思う。関電は、従来の 供給側の論理から離れ、経済性と安全性のバランスを真剣に考えてほしい。

「15%のお願いで結果として5%の節電だったということ」。原発の再稼働ができなければ電力需給が逼迫(ひっぱく)するとして、関電は7月1日 から9月22日まで、昨夏ピーク比15%の節電を社会に要請した。最終日に会見した八木誠社長は、節電の実績を大企業7%、家庭3%、全体で5%と明かし たうえで、15%の目標を妥当だったと総括した。だが、結果論で済ませるのは違うのではないか。

◇ピーク需要予想、突如引き上げ

関電は原発事故直後に公表した夏の予想ピーク需要を6月上旬、突如101万キロワット引き上げ、過去10年間で最大の3138万キロワットを 15%節電の前提にした。15%の根拠は薄弱で、関西6府県の知事や市長、大企業経営者から批判の声が上がった。当然だ。15%は企業に減産を強いる水準 なのだ。大震災で原発や火力発電所が壊れた東京電力管内で大企業に対して強制的に15%節電を求めたのと状況も違う。私は取材の度に根拠を示すべきだと詰 め寄ったが、最後まで明快な説明はなかった。

今夏の実績は過去10年で最低の2784万キロワットと、リーマン・ショック後の09年、冷夏だった03年も下回った。節電要請期間中に電力需給 の余力が10%未満になったのは5日間だけで、逼迫警報もなかった。需要予測を多く見積もったまま、過度な節電を社会に強いたことにならないか。

法律で電力供給義務があるため、余裕を持ちたいのは理解できる。韓国が電力需要を少なく見積もって、大停電になったのは記憶に新しい。しかし、過 剰な節電で企業が減産したり、家庭でエアコンを使わずに体調を崩すのも、悪影響ということでは停電と同じだ。節電は停電を避けるための手段の一つだ。関電 が15%節電が必要不可欠と思わせるメッセージを送り続けたことは、経済や暮らしに与える悪影響に目をつぶったと言われても仕方がない。

目標を見直す機会はあった。節電期間が始まってから約3週間後、政府は関西の企業や家庭に対して10%の節電要請をした。西日本の電力会社間での 電力融通を見込んだうえで、「経済活動への影響を最小限にしたかった」(経済産業省資源エネルギー庁)という判断だ。関電は「政府と考え方は一緒」としな がらも15%の旗は降ろさず、ますます根拠は疑わしくなった。暑さのヤマ場である8月を過ぎても目標を見直すことはなかった。

迷いはあったようだ。「15%か10%かの議論はぎりぎりまであった」(幹部)と聞いた。「世間にお願いする立場の説明になっていない」とうつむ く中堅社員もいた。しかし、経営陣らは「電力会社が何を言っても批判される」「停電して批判されるくらいなら、15%がおかしいと言われるほうがいい」と 言い切った。

◇電動装置使わず、エアコンを調整

企業や家庭は真剣に節電に取り組んだ。毎日新聞が関西の主要50社を対象にした節電アンケートで、15%を達成できなかった企業は5割あったが、 企業活動の維持と節電の両立をギリギリ追求した結果だ。中小企業は電動装置を使わずに手作業にしたり、エアコンを切るなどした。家庭では新聞の紙面で「で んき予報」を参考に、エアコンの温度を調整するなど電力消費を見直した人が多い。節電実績が目標を下回ったのは、15%という数字が過剰だったことが見透 かされた結果と言えないか。ただ、冬の節電に向けては、自治体と目標を協議するというから、行方を注視したい。

一瞬にして原発の信頼が失われ、原発の再稼働も当面は困難な状況だ。電力需給が厳しくなる中、企業活動や暮らしの維持と節電の両立を探った関西の 人々に比べ、関電の対応は、あまりにかたくなだった。電力問題は電力会社だけでなく、広くユーザーも一緒に考えなければならないテーマだ。そのためにまず 必要なのは、正確な情報を速やかに社会に提示することだ。関電は、原発事故の現実を踏まえた経済性と安全性の両立という課題を突きつけられていることを、 もっと自覚すべきだ。

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