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記者の目:放射性廃棄物の最終処分場問題=袴田貴行

10月 7th, 2011 | Posted by nanohana in 1 汚染の拡散 | 1 福島を救え | 3 政府の方針と対応 | 4 核廃棄物 がれき 汚泥 | 5 オピニオン

毎日新聞 10月7日
◇福島の思い胸に皆で考えよう

「原発周辺は国が買い上げ、高レベル放射性廃棄物の最終処分場にするくらいのことを考えてもいい」。連載企画「この国と原発 第1部 翻弄(ほんろう)される自治体」(8月19~25日朝刊)で、福島第1原発事故に伴う警戒区域の元町議からこんな声が出ていることを紹介した。事故後、脱原発世論が一気に高まったが、最終処分場の問題の論議は深まっていないように感じる。この問題は避けては通れない、国全体の課題だ。避難生活が長期化している福島の人たちだけに可否判断を強い、苦悩させるのは酷だ。

◇避難住民が語る福島第1周辺案

震災後、取材班の一員として何度も福島県を訪れ、福島第1から半径20キロ以内の警戒区域への一時帰宅にも同行した。半径20~30キロ圏の緊急時避難準備区域は9月30日に解除されたが、警戒区域を解除する見通しは立たない。

過酷な現実を前に、ふるさとを追われた人から、悲壮な決意も聞こえてくる。双葉町から郡山市に避難している天野正篤さん(73)は、帰郷の望みは捨て、原発周辺の汚染地帯を高レベル放射性廃棄物の最終処分場にすべきだという考えに行き着いた。国に新たな土地で復興できるよう補償を求めていきたいという。天野さんは「晩節に入ってこれ以上の苦しみはないが、国家のために何ができるかを考えた時、それしか浮かばない。その代わり、要求すべきものは要求していく」と話す。

福島第2原発が立地する富岡町の元町職員も「本当は自分たちの土地にそういう物は置きたくないが、ここより危険な地域はどこにもない以上、狭い国土全体にリスクを分散させるわけにはいかない」と苦渋の判断を口にした。

原発から出る「核のごみ」の最終処分は法律で、ガラスと一緒に固めてステンレス製の容器に密封し、地下300メートル以上の地中に埋めることになっている。それでも、放射能が危険レベル以下に下がるには10万年かかるとされる。

経済産業省の認可法人「原子力発電環境整備機構」によると、最終処分場建設が決まっているのは、世界でもフィンランドとスウェーデンだけだ。日本では、同機構が02年に立地自治体の公募を開始。地震・噴火の記録や岩盤の強度などを調べる3段階の調査があり、初期段階の調査に応募しただけで、関連自治体に最大20億円の交付金が出る。07年に高知県東洋町が応募したが、議会や住民の反発を招き、出直し選挙を経て新町長が撤回。その後、選定作業は暗礁に乗り上げたままだ。
◇なし崩し的に六ケ所村へ?

現在、国内に貯蔵されているガラス固化体は約1700本で、国は21年ごろには約4万本に達すると試算する。最終処分場建設のめどが立たない中、青森県六ケ所村の一時貯蔵施設が多くを引き受けているが、村民の間には「なし崩し的に最終処分場にされる」との疑念がくすぶる。「この国と原発」の連載で取材した、同村の元幹部は「最終処分場などできっこない。100~200年置かれるなら、有事にも対応できる地下300メートルの施設を造るべきだ。国を守るためなら、そのまま最終処分場になってもやむを得ない」と苦悩を語った。

よくよく踏まえないといけないのは、福島や六ケ所の人たちの「故郷への思い」だ。「福島の原発跡地を最終処分場にしてもやむをえない」という主張には、当然反発が強い。全域が警戒区域の渡辺利綱大熊町長は「原則反対。町民にも核のごみ捨て場にしてはならないという思いがある。国の責任で除染に取り組むのが先で、それもやらないうちから『帰れない』と言うのはあまりに理不尽」と話す。

岡山県の親戚宅に避難している同町の木村紀夫さん(46)は、自宅を津波で流された。父(当時77歳)と妻(同37歳)が亡くなり、次女(8)は行方不明。帰宅の見通しは立たず、父と妻の遺骨も代々の墓に納骨できない。「10年や20年かかっても、3人の思い出が詰まった故郷に帰りたい。そこを核の墓場にするというのは、あまりに残酷すぎる」

通常、「記者の目」欄は筆者の意見や主張を書いて締めくくる。だが、私にはそれができない。あまりにテーマが重く、明快な結論は浮かばないからだ。「国策に翻弄された福島の被災者に、最終処分場まで押しつけるなどとんでもない」という思いは強い。だが、原子力という「パンドラの箱」を開けた以上、その後始末をしなければならないという現実も、直視する必要がある。今、国民に求められているのは、この深刻な課題に皆で向き合い、真剣に考えることだ。私も国民の一人として、そうしていきたいと思っている。(東京社会部)

 

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