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猛毒=放射能拡散に知らんぷり  東電、責任回避のカラクリを検証する  

1月 24th, 2012 | Posted by nanohana in 1 補償 | 3 政府の方針と対応 | 3 東電 電力会社 原子力産業

人民新聞 2012.1.23

昨年7月、広瀬隆氏、明石昇二郎氏らが、刑法第211条(業務上過失致死傷罪)に該当するとして、東電幹部・原子力安全委員会委員らを刑事告訴し た。両氏は東京電力が、①福島第1原子力発電所の南西約4キロにある双葉病院(福島県大熊町)の入院患者らを重度の被曝に晒し、さらなる被曝を避けるべく 実施された緊急避難等により、患者ら約440人中45人以上を死亡させたこと、②20㌔圏内を多量の放射性物質で汚染し、20㌔圏内の立ち入りが禁止され たため、居住できない地域にしたことに加え、地元産業全般の経済活動を停止に追い込み、存亡の危機に陥れたことが、業務上過失致死傷罪に当たるとしてい る。

「事故から半年以上が経過したのに、誰一人として事故の責任を問われていない。これでは、法治国家ならぬ『放置国家』だ」―こう怒る明石昇二郎氏 は、「今のままでは、多くの損害が踏み倒されるのは不可避の情勢だ」と語る。被害補償の実際を概括し、東電の加害責任を雲散霧消させようとするカラクリを 検証する。(編集部・山田)

加害者が補償の枠組みを決める非常識

2011年9月、東京電力は「仮払補償金」を請求した被害者に「補償金請求の案内」を郵送し、本格的な補償金支払い手続きを開始した。加害者である東電が、賠償の枠組みを全部作り、被害者に対して「請求せよ」と指示するという非常識がまかり通っている。

しかも、補償の地理的範囲は、「警戒区域」や「計画的避難区域」「緊急時避難準備区域」「特定避難勧奨地点」と、南相馬市が一時避難を要請した区域に限定している。

放射能汚染によって避難を余儀なくされ、あるいは仕事ができなくなった人は、福島市・郡山市は無論、茨城県にも及んでいる。東電は、日本中と言ってもいい広範囲の地域を放射能で汚染したにもかかわらず、先の区域以外の加害責任を認めようとしない。

日弁連は、①原発から圏内80㎞となる部分がある市町村については全ての者について賠償の対象とするべきであり、②3か月当たり1・3㍉Sv(年間 5・2㍉Sv、毎時約0・6μSv)を超える放射線が検出された地域においては、全ての者について賠償の対象とすべきとの意見書を発表している。

後の被害請求放棄を求める東電

「損害賠償の基本は、財産や権利が侵害される以前の状態に戻してもらう『原状回復』である」と語る保田行雄弁護士に従えば、東電には、全ての放射能汚染被害について賠償責任があり、加害者として原状回復を図る義務があるはずだ。

したがって損害賠償の枠組みは、「東電の支払い能力」ではなく、「被害実態」を基礎に、中立的第三者のチェックや仲介を経て決定されるべきものだ。 「加害者側が一方的に補償の枠組みを作り、被害者に請求するよう指示するなんて前代未聞」(保田弁護士)。しかも第三者のチェックも受けていない今回の賠 償手続きは、公正さを著しく欠き、東電の当事者意識のなさと傲慢さを語ってあまりある。

しかも東電は、「補償金請求の案内」のなかに、「同一補償対象期間における、各補償項目の請求は1回限りとすること」という文言を滑り込ませてい る。「一切の異議・追加の請求を申し立てることはありません」との文言は、非難を浴びて削除されることになったが、前記「1回限り」は記載されたままだ。保田弁護士は、「少なくともこの1文を2本線で消してはんこを押し送り返すべきです」と被害者に注意を呼びかけている。

原子力損害賠償紛争審査会の「中間指針」

こうした東電の傲慢な姿勢の根拠となっているのが、原子力損害賠償紛争審査会による「中間指針」である。同審査会は、「原子力損害賠償法」に基づき昨年4月、文部科学省の下に設置された。8月に「中間指針」を発表し、「補償」の枠組みを提示した。

東電は、原子力損害賠償制度と、原子力損害賠償紛争審査会が出した「指針」に基づき補償するという立場を頑なにとり続けているが、「中間指針」には 数多くの欠陥がある。まず、①東電の賠償責任を曖昧にしている。「中間指針」には、東電の加害責任について何らの言及がなく、東電は法的加害責任を明示し ないまま補償交渉を進めようとしている。

また、②除染費用については全く触れていない。数兆円に上ると見られる除染費用について政府は、東電に請求するかどうかは曖昧なままだ。事故の原因 や東電の「責任論」が曖昧にされているからだ。このまま政府が肩代わりすると、その金は国会議員が支払うわけではないので、被害者である国民が増税という 形で加害者の賠償費用を補填することになる。

また、浄水場から出る汚泥が高濃度の放射能で汚染されてしまい、日本各地の自治体がその処理に困り果てている。発生者責任を考えれば、この汚泥を戻 すべき場所は、東京電力の本社か、福島原発の敷地しかない。こうした汚泥処理費用も自治体が肩代わりするのはおかしいと言わねばならない。

さらに、③放射能で汚染されて事実上無価値になった家や不動産、農地に対する補償の話が丸ごと先送りにされている。汚染された家には帰りたくないと いう人には、東電が即刻、家と土地を買い上げ、移転費用を支払う。家に帰りたいという人には、東電が除染をして原状回復の努力をすべきだ。

④事故で被曝した一般住民の健康被害については事実上認めていない。指針が健康被害として想定しているのは、「直ちに健康に影響が出る」ような急性放射能障害だけ。東電の「補償金請求の案内」には、「被曝」の2文字が全く書かれていないのである。

被害者サイドに立った救済策を

(以下一部全文は1435号を入手ください。購読申込・問合せはこちらまで。)

双葉町は「東電に一方的に押し切られてしまうわけにはいかない」として、東電の補償金説明会を拒否した。

原発事故は交通事故ではない

審査会は、精神的損害の計算の参考として「交通事故」の算定基準を採用した。…原発事故がもたらした生活と生業の破壊は、原子力損害賠償法による金 銭賠償だけで回復できるものではない。救済の基本的視点は、被害賠償ではなく、生活再建、ひいては人生そのものの、回復におかなければならない。

この記事は 人民新聞

 

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