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給食の安全性/下 福島の親、不安口にできず & 子供の健康、国の責任で守れ--小出裕章・京大原子炉実験所助教

10月 8th, 2011 | Posted by nanohana in 1 子供たちを守ろう | 1 放射能汚染 | 1 福島を救え | 1 食品

毎日新聞 2011.10.7

◇農業県で周囲に気兼ね 弁当持参には学校難色

「地産地消」が推進され、昨年度は給食食材の36%、コメは100%を県内産でまかなった福島県。しかし、多くの自治体には放射線の検査機器がない。また農作物の産地でもあるだけに、保護者は表だって不安を口にできずに苦しんでいる。

栃木県に近い白河市。学校給食センターの菊池富雄所長によると、生鮮品は地元産がほとんどだ。「キュウリやトマト、インゲンは市内でとれたもの。果樹栽培も盛んでデザートも近隣農家から調達する。これからはリンゴが人気です」

センターでは2学期から、放射性物質の測定を始めた。1日8食材が限界だが、野菜や肉、卵などを前日に調達し「シンチレーション検出器」にかける。

市の方針で、放射性物質が国の暫定規制値(セシウムは1キロ500ベクレル)以下の数値でも、検出されれば給食には使用しないよう決めた。これまではすべて、検出限界値30ベクレルを下回る「不検出」だ。

市教委によると、測定器購入後は給食を拒否する児童が十数人から5人に減った。菊池所長は「保護者が心配するのは、子供の口に入るものが安全かどうか。結果を開示すれば福島産でも納得してもらえる」と解説する。長女(9)が市立小に通う小松直美さん(39)は「店で売られているのは国の規制値以下。今は給食の方が信頼できる」と話す。

県教委によると、今後は福島市やいわき市が給食の検査を始める予定だが、多くの自治体には検査機がない。各自治体は独自の方法で安全性を探る。

いわき市は「流通しているものは基本的に安全」としながらも、農林水産省や県のホームページで農作物の検査結果や出荷制限情報を毎日チェック。購入の前日までに産地情報を入手し、不安が残る食材が紛れ込まないようにしている。

保護者からは「北海道や西日本の食材を使ってほしい」という声が寄せられる。いわき市平(たいら)南部学校給食共同調理場は、市から送られるデータを見て、同じ数値なら遠方から取り寄せるという。新妻正典所長は「福島産が怖いというわけではない。風評被害につながりそうで、心に引っかかるが……」と苦悩する。市内の別の共同調理場所長も「福島産が給食への不安につながるなんて、やるせない」と打ち明ける。

福島市や郡山市は、昨年までの地産地消は「とても推進できない」(教育委員会)状況だという。産地情報だけで決めない方針を貫き、国の規制値以下の食品は使用可能とし、各校の判断に任せている。多くの自治体に加工食品を納入する「福島県学校給食会」は、小松菜やブロッコリーを一部九州産に切り替えた。

◇  ◇

給食を敬遠する保護者の多くが、何らかの圧力にさらされている。いわき市の千葉由美さんは5月から小3の娘に毎日、弁当を持たせている。教室では1人だけ。校長から電話で「なぜ給食を食べないのか」と問われ、「給食も教育の一環。みんなで同じものを食べることに意義がある」と説明された。食材の産地公表を求めたが応じてもらえなかった。

「弁当にこだわるのは、食の安全を守りたい気持ちが半分。あとは、周囲に気兼ねして声を上げられないお母さんを代弁するため。子供が何を食べているのか知りたい親の気持ちは、間違っていますか?」

いわき市内の小学生(7)の母親(39)は、同居する夫の両親が農家で、近所も農家が多い。給食への不安は声にできない。「被ばくした福島の子に(他県と同じ)国の基準をあてはめないでほしい」と願う。学校に弁当を持たせたいと頼んだが、理由を書いた文書を提出したうえで校長が許可するといわれあきらめた。「校長の考え方一つで子供の安全が決まるなんて」と嘆いた。

小6と小4の子を持つ二本松市の母親(36)は心配なことがあるという。「学校で牛乳を飲まない子が『非県民』とからかわれたと聞く。放射能への自衛策を非難する雰囲気があるのなら、残念だ」。大人の混乱が子供たちにも伝わっている。

◇  ◇

どこまで調べ、どう保護者に伝えるのか。自治体や学校で対応は異なり、親は翻弄(ほんろう)されるばかりだ。

郡山市のある小学校では、校内放送で毎日、野菜の産地が公表される。「不検出の野菜しか使わない、と校長が丁寧に説明してくれて安心している」とある母親(42)。一方、須賀川市の母親(43)は「学校は『安心してください』としか言わない。弁当は子供が嫌がるのであきらめた」とうんざりした様子だ。

「子供の安全に関わることが、自治体の知恵比べでいいのだろうか」。ある市教委の担当者は漏らした。文部科学省学校健康教育課は「弁当を持参するかどうかは自由。産地などの情報提供は適切に行うよう各教委に伝えている」と話すが、最終的には現場の判断に委ねられているのが実情だ。【鈴木敦子】

小出裕章・京大原子炉実験所助教の話

◇子供の健康、国の責任で守れ--小出裕章・京大原子炉実験所助教

京都大原子炉実験所の小出裕章助教(原子核工学)に、給食の安全をどう守るかについて尋ねた。

子供に安全な給食を提供することは国の責任。個人レベルで自衛する話ではない。弁当を持たせるとか、牛乳を飲まない子が非難されるとか、そんな苦労を強いている国の姿勢が問題だ。

国は、子供の口に入る食品の放射能の汚染度を調べ、特に福島の子供については一番きれいな食材を使うべきだ。地産地消で地元産を使えば、親も子も不安になるだけ。自衛できない親から反発を生み、親同士で反目し合う結果になる。福島県内で取れる農作物はすべて汚染されていると考えるべきだ。子供に与えるのは間違いだ。

検出限界が1キロ当たり30ベクレルといった性能の悪い測定器で測っても意味がない。精度の高い機器で測る必要がある。そもそも国の暫定規制値が緩すぎる。原発事故前の農作物は1キロ当たり1ベクレル程度の汚染だったと推定されるので、30ベクレルだとしても30倍も我慢させていることになる。

学校や自治体はすべてのデータを公表すべきだ。その上で、子供には放射性物質に汚染されていない食材を与えなくてはいけない。誤解されては困るが、私は福島の農家を守りたいと思っている。汚染された食べ物については、放射能の影響が低い大人が食べる覚悟を持つことが大切だ。

2011年10月7日 東京朝刊

 

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